不妊に悩む女性のおおよそ3%の方がもたれている「抗精子抗体」
あまり知られていない言葉ですが、自然妊娠する可能性を大きく左右するうえ、
抗精子抗体が陽性であれば、治療方針は体外受精以上に限定されるなど、非常に重要なポイントです。
抗精子抗体とは何か、どのように検査し、結果に対してどのように対応すればよいかを簡単に解説していきます。
抗精子抗体とは
抗精子抗体とは、頸管粘液、子宮腔、卵管内、卵胞液内などに存在し、抗精子抗体が精子と結合すると精子が運動を停止するものです。
本来は女性の体は精子を受け入れ、頸管粘液についても、精子が卵子のもとへたどり着くのをサポートする必要がありますが、
抗精子抗体があれば、精子は敵だと認識されてしまい、受精の場へたどり着くことはほぼ不可能となります。
なぜこうしたものができるのかについては現時点で確かな機序は明らかになっていませんが、
間違いなく精子の活動を止めてしまうため、自然妊娠の可能性を大きく左右する要素と言えます。
治療としては、人工授精、体外受精の適応となります。
基本的に女性の中に存在するものですが、ごく稀に精子と血液が交じり合うことで
男性にも抗精子抗体が生まれる場合があります。
炎症や外傷、避妊目的のパイプカットを経験した方には、かなり高い確率で抗精子抗体ができるといわれており、
その結果として精子無力症という方もいるため、該当する人には注意が必要です。
検査方法は?費用は?
抗精子抗体検査は血液検査で行うことができ、一般には「陰性」「陽性」「強陽性」の3段階で評価されます。
男性の場合には、精液を顕微鏡で確認し、そのうち20%以上の精子に抗体がついていると陽性という判断がされます。
一般には術前検査や各医療機関ごとのスクリーニング検査などに含まれていることが大半ですが、
抗精子抗体は保険が適用できないのでおおよそ1万円程度の治療費がかかると考えておくとよいでしょう。
治療方法はあるのか?
不妊治療において、間違われがちなのは原因を直すことが治療とは限らないということです。
抗精子抗体が陽性であるのなら、抗精子抗体と精子を合わせなければよいと考えれば治療計画はおのずと見えてきます。
抗精子抗体陽性の場合、自然妊娠や人工授精での妊娠の可能性はゼロではないが極めて低く、
体外受精(顕微授精)以上の高度生殖医療を行うことが多くなるかと思います。
男性で抗精子抗体が陽性の場合も、すべての精子に抗精子抗体がついているというわけではないため、顕微授精によって対応することが一般的です。
フーナーテストや頸管粘液検査などと同様に、早い段階での検査をすることで判明すれば
治療計画も早急に立つため、術前検査はしっかりと受けることを推奨します。