基礎知識

男性のアルコール・カフェイン摂取と体外受精の成績について

以前のコラムで生活習慣と妊娠の話がありましたが、こういった文献は女性をターゲットにしたものが多いのが現状です。

では男性に絞って考えるとどうでしょうか。

外来でよく聞かれるのが、たばこは精子によくないと聞いているが、アルコールとコーヒーはどうなのかということです。

もちろん多量のアルコールは生殖に対して悪影響を及ぼすとされています。

しかし、多くの文献はある程度のアルコールやカフェインであれば、精液所見に影響しないとしているものが多く、

またこれらの摂取によって、妊娠までかかる期間や、出生率に差はないとしているものが多い印象があります。

 

男性のアルコール・カフェイン摂取と体外受精の成績の関係について


過去の男性不妊と飲酒について紹介している記事は以下から確認いただけます。

飲酒と男性不妊について

 

Male caffeine and alcohol intake in relation to semen parameters and in vitro fertilization outcomes among fertility patients.
Karmon A Toth T Chiu Y Gaskins A Tanrikut C et. al.
Andrology 2017 vol: 5 (2) pp: 354-361

ほとんどの論文は精液検査の変化や差を生殖能力の評価にしていますが、今回の論文は、男性のアルコールやカフェインの摂取によって、ARTの結果に影響があるかを調査したものです。

―対象―

不妊カップルの18-55歳の男性です。1週間の食事記録からアルコール、カフェインの摂取量を割り出しており、精液所見の項目と、生活習慣、ARTの結果を表す項目などで多変量解析を行っています。

―結果 精液所見とARTの受精率―

精液所見については、アルコール摂取量、カフェイン摂取量ともに相関はありませんでした。

また、カフェインの摂取量と体外受精(IVF)の受精率の相関はありませんでしたが、アルコールの摂取量の増加に伴い、ICSIでは胚の受精率は高い傾向、cIVFでは相関しないという結果でした。

胚の質についてですが、アルコールでは分割率やクオリティの低い胚の割合はかわりませんでした。また移植できた胚の数もアルコール・カフェインともに相関はありませんでした。

カフェインの摂取によって、クオリティの低い胚の割合はかわりませんでしたが、胚の分割に変化があるとされています。

―ARTによる妊娠率―

ARTによる妊娠率ですが、アルコールを摂取によって妊娠率に差は認めないものの、カフェインの摂取量と妊娠率は反比例の関係になったとされています。

出生率についても同様であり、1日272㎎以上カフェインを取るグループと99㎎以下のグループの間には出生率に19%:55%と大きな差が生じています。

アルコールについては、摂取量が22g以上のグループと3g以下のグループでは出生率に61%:28%と有意差が認められました。

予想通りにカフェインの摂取が少なく、アルコールの摂取が多い男性が最も高い出生率を示し、カフェインの摂取が多く、アルコールの摂取が少ない男性が最も低い出生率を示しました。

―結果 ARTの方法と出生率―

ARTの方法としてはICSIではカフェイン摂取によって出生率が低下しましたが、cIVFでは差がみられませんでした。アルコールではどちらも差が認められていません。

様々な研究では中等度のアルコールは生殖能力を増すもしくは関連がないとしています。

カフェインは関連がないとするものもありますが、多量のカフェインは妊娠率を落とすとしているものあります。

これは男性が多くカフェインを摂取する生活習慣においてパートナーの女性もともにカフェイン量が増えていることが影響しているのかもしれません。

しかし、1日3杯以上のコーヒー(約300mg /日のカフェイン)が、年齢とは無関係に、精子のDNA損傷の危険因子であり、また、カフェインは精巣のセルトリ細胞に影響を及ぼすことも報告されています。

ここでわかるのは精液所見が変わらないからといって、妊娠率にも影響がないということではないということです。

精液所見が問題ない方も精子の質を上げる生活習慣を送ることが不妊治療の成功率にいい影響を与えることになります。

ちなみに272㎎以上のカフェインはコーヒーで3杯、500㏄のペットボトルのお茶で3-6本です。20gのアルコールはビールなら500ml、日本酒なら約1合です。

適度な飲酒はよいのかもしれませんが、不妊治療中であればカフェインは意識的に減らしたほうがいいかもしれません。

その他、男性の精子は酸化ストレスに非常に弱いと考えられています。

少しでも気になる方はちょっとしたところからでも生活改善してみてはいかがでしょうか。

男性不妊と活性酸素(フリーラジカル)の関係性

妊活ノート編集部

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