私たちは妊孕性温存に様々な形で取り組んでいます。
一方でより患者さんに視点を当てて、考えていくと別の問題も見えてきます。
その一つががん治療と仕事との両立ということではないでしょうか。
がん治療には様々な費用がかかり、休職などを余儀なくされることもあります。
そして、がん治療はホルモン療法なども含めると、長期間にわたった治療が必要となります。
その間、どのようにして仕事と両立していくのかが非常に重要です。
がんと就労白書2017-2018を読んで
がんと就労白書、というものが国立がん研究センターより発行されています。
このデータを引用して、ご紹介したいと思います。
ここでは、乳がんで3回の手術と王ガン剤治療を受けながら部長職を継続された方の例をはじめ、
仕事とがん治療の両立のエピソードについて紹介されています。
その他にも様々なデータが紹介されていて、印象的な部分だけを抜粋すると、
・「働きたいと思うがん患者を受け入れる職場環境」かどうかについては、80%がそうは思わない
・「がんにかかったら仕事を辞めないといけないと思う」方は、回答者の20%程度
という点でした。
逆を言えば、8割の方ががんにかかっても働きたいと思っていて、
80%の方が、働きたいがん患者を受け入れてくれる職場環境ではないと思っている、
というミスマッチが現在の課題なのではないかと思います。
以前に比べて、がん治療の技術が著しく成長し、がん治療の生存率が高まる中で、
仕事との距離も縮まってきていますし、
がんは2人に1人が将来罹患すると言われていますので、自身ががんでなくても、
パートナー、友人、家族、職場の同僚など、身近にがん体験者がいらっしゃることもあり、
加速度的に様々な制度が広がっている印象を受けます。
一方、私たちの妊孕性温存というところで言えば、もっと若い世代のがん患者さんも出てきます。
キャリアを形成する前の社会人の方もいれば、学生の方もいます。
そうした方まで含めたサポート体制が今後一層求められるのだと思います。
私たちが仕事との両立を直接的に何かできないとしても、
患者さんが置かれた環境を正しく理解し、接することはできます。
患者さん目線での妊孕性温存ができますよう、努めていきたいと思います。