今回は、男性の妊孕性温存について紹介したいと思います。
これまでご紹介した内容については、以下から確認いただけます。
精巣腫瘍について
若年(15歳以上40歳未満)の日本人男性に多いがんとして、精巣腫瘍(がん)と白血病などの血液のがんが大半を占めます。
特に精巣腫瘍は、20歳~30歳でかかる人が急増するのが特徴です。
精巣において、男性ホルモンを産生するのがライディヒ細胞、精子を作るのが精母細胞といわれる細胞です。
精巣腫瘍の95%は、精母細胞から発生します。
精母細胞のような生殖と直接的にかかわりのある細胞を胚細胞とも呼ぶため、
精巣腫瘍は胚細胞腫瘍と呼ばれることもあります。
精巣腫瘍自体は10万人に1人が罹患すると言われますが、特徴として、
特に20歳~30歳でかかる人が急増することで知られています。
実際に20歳ー30歳代の男性がかかる固形腫瘍としては、最も多いがんであることが、
国立がん研究センターからも報告されています。
精巣腫瘍の腫れや硬さの変化が主な症状としてあります。
専門家でなければ、なかなかこうしたことに気が付かないことも多いですが、
当院で単純に問診だけ、精液検査だけを行うのではなく、
視触診を行うのもこうした理由があります。
精巣腫瘍の種類には、セミノーマか非セミノーマかの大きく二つに大別されますが、
この判断はとても重要です。
というのは、セミノーマでは放射線治療と抗がん剤による化学療法の両方が有効であるのに対して、
非セミノーマでは化学療法は有効であっても、放射線治療の効果は低いからです。
そのため、セミノーマのほうが治療予後はよいと考えられています。
がん治療による生殖機能へのダメージ
精巣は抗がん剤や放射線によるダメージを受けやすく、生殖可能年齢での化学療法や放射線療法は生殖機能を著しく低下させる可能性があります。
化学療法で使用する薬剤のうち、アルキル化剤や白金製剤は、一時的に無精子および精子減少を引き起こすとされています。
しかし、80%は5 年以内に正常に戻るとされています。
他の報告でも化学療法後では50%以上の症例に精子数の回復が認められていますが、妊孕性が回復しない場合もあります。
また、精子数が回復しても、精子の質は治療後に落ちるという報告があります。
放射線療法では、照射線量が多いほど不妊期間が長くなるとされています。
また、泌尿器科系がんや直腸がんの手術療法後に、性機能障害(射精障害、勃起障害、性欲の減退)や性交障害がみられることがあります。
がん治療後に推奨される避妊期間ですが、催奇形性を有する薬剤を投与した場合、薬剤の半減期の5倍に90日を加算した避妊期間が必要だと言われています。
においても紹介しましたが、
精子凍結についてはベストな時期としては、
治療前
がベストです。
また長期的な診察が必要になるためフォローアップも同時に必要となりますね。