基礎知識

出産・流産・死産後の次の妊娠までの期間について

当院では二人目不妊の方や1人目の治療を当院でされ、

凍結胚を用いて、2人目の治療も行うという方がとても多くいらっしゃいます。

その時によく出る質問として、

どれくらいの期間をあけて臨むのよいのか

ということがあります。

 

今回はそうした「期間」についての論文を紹介します。

 

出産・流産・死産後の次の妊娠までの期間について


2人目の治療ということで来られる方に標準的にお伝えしていることは、

断乳していること

月経が回復していること

です。

断乳について、少し解説しますと、授乳に関係しているのはプロラクチンというホルモンです。

プロラクチンの働きは卵巣機能を抑制し、基本的には無排卵、無月経の状態が続きます。

授乳を行っている方では6-10カ月程度で月経が再来すると考えられています。

授乳していない方では、2-4カ月で月経が再来することが多いといわれます。

そして再来した初回月経の約30%は無排卵で、

第2周期目では80%以上で排卵周期となると考えられています。

そのため、断乳と月経が再開しているか、という点は確認が必要なのです。

 

さて、今回のテーマに話を戻しますと、次の妊娠までの期間ということですが、

その場合、前の妊娠から次の妊娠までどれくらいの期間を空けるのが望ましいのでしょうか。

WHOは妊娠と次の妊娠までの期間 interpregnancy intervals (IPIs)の推奨は、

生産後は24ヶ月以上、流産・中絶後は6ヶ月としています(2005年)。

WHOの推奨には体外受精治療中の患者に対する特別な推奨事項はありません。

 

In vitro fertilization, interpregnancy interval, and risk of adverse perinatal outcomes.

Fertil Steril. 2018 May;109(5):840-848.e1. doi: 10.1016/j.fertnstert.2018.01.019.

 

体外受精後の妊娠と、自然または体外受精以外の治療後の妊娠における、妊娠と次の妊娠との間隔とその周産期合併症について比較することを

目的として、アメリカの施設にて2000-2010年に登録された 1,225,718分娩 (体外受精 12,633分娩、体外受精以外 1,213085分娩)を対象に行われた

大規模なコホート研究です。

この研究で出てくる専門用語について補足します。

妊娠と次の妊娠までの期間 interpregnancy interval(IPI):直近の妊娠が終了した日から最終月経まで
preterm birth (PTB) :37週未満の早産
low birth weight (LBW) :2500g未満の低出生体重
small for gestational age (SGA):10%タイルの子宮内胎児発育遅延

主要評価項目:前回妊娠時が生産・非生産であった場合のIPIとPTB、LBW、SGAの関連を評価すること
結果:
前回生産で体外受精で妊娠したグループ

IPI 12 ヶ月~ 24ヶ月 早産率 22.2% LBW率 14.1% SGA率 9.7%
上記に対して早産率
12カ月未満  補正相対リスク 1.24 (95%信頼区間 1.09-1.41)
60か月以上 補正相対リスク 1.12, 95%信頼区間 1.00–1.26
LBW SGAについても同様の結果となりました。

前回生産で体外受精以外の方法で妊娠したグループ

IPI 12 ヶ月~ 24ヶ月  早産率 6.4% LBW率 4.4% SGA率 6.5%
12カ月未満 補正相対リスク 1.19, (95% 信頼区間 1.16–1.21)
60カ月以上 補正相対リスク 1.19, (95% 信頼区間 1.16–1.21)
LBW についても同様の結果となりました。

前回の妊娠が非生産だったグループ

IPI 12 ヶ月未満では 体外受精グループ、体外受精以外のグループとも PTB、LBW、 SGAリスク上昇と関連しない
体外受精以外のグループの分娩ではIPI が60ヶ月以上で有意に合併症リスクが上昇する

筆者らは今回の結果となった理由として、

IPIが短い場合、母体の肉体的回復が不十分であること、栄養の枯渇、精神的ストレス、児のケアや食事の世話、膣内細菌叢の修復が間に合わないのではないか。

期間が長い場合、母体年齢の上昇(特に40以上)、不妊症(癌、肥満、糖尿病の合併などによる)も影響すると考えられる。

体外受精と体外受精以外で妊娠した場合に共通することとして、非生産後の妊娠では短いIPIによる合併症リスクは増大しない。

と考察しています。

 

体外受精と体外受精以外で出産した場合、どちらも次の妊娠までの間隔は12ヶ月未満と60ヶ月以上の場合に、より高い周産期合併症リスクと関連があることがわかりました。

今回の論文から、体外受精による妊娠と次の妊娠の間隔が短い場合は、

早産などの周産期合併症を起こすリスクが上昇することをよく認識して、1年以上は間隔を空けて治療に当たる必要があることが示唆され

体外受精での妊娠では、自然妊娠と比べて、早産、低出生体重児、胎児の発育遅延リスクがやや高いこともわかります。

 

つまり、前回どのような経緯で出産したのか、あるいは流産・死産なのかによって、次の妊娠までの期間は異なり、

その点を考慮して治療にあたる必要があります。

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