着床前スクリーニングは現在日本産科婦人科学会で臨床研究をしており、
今後の結果が待たれておりますが、世界ではさらに一つ進化してきています。
高精度な検査ができるようになることは、必ずしも問題を明らかにするということだけでなく、
新たな「わからないこと」を生み出すことは少なくないと思います。
着床前スクリーニングは従来、Euploid/Aneuploid、つまり正常なのか異常なのかということだけをとらえていたものから、
NGS(次世代シーケンサー)といわれる機器の使用により、より精緻に確認できるようになりました。
そこで出てきた存在が、モザイク胚といわれるものです。
このモザイク胚とはどのようなものなのか、という点について紹介したいと思います。
分かりやすく言えば、正常とも異常とも言い切れない状態ということだと考えるとよいと思います。
一つの胚の中に染色体が正常な細胞と異常な細胞が同時に発生した状態をさし、
その割合が示されます。
モザイク胚とは モザイク胚を移植しても妊娠するのか?健康な子供は生まれるのか?
着床前スクリーニングなどのこれまでの情報は以下から確認いただけます。
モザイク胚といわれますと、正常な胚ではないのだから、異常と考えて排除するというように考えられがちですが、
今年発表されている論文で、その対応では不十分である指摘がされています。
Spinella F et al.,Fertil Steril. 2018 Jan;109
この論文では、Euploid(正常):A群と判断された受精卵と、50%未満のモザイク胚(B群)、50%以上のモザイク胚(C群)を比較しています。
その結果は、
妊娠率
A:64%
B:59%
C:33%
着床率
A:54.6%
B:48.9%
C:24.4%
出産率
A:46.4%
B:41%
C:15.2%
と、A・B間に差はなく、Cに有意差を認めました。
モザイクという言葉が適切かどうかはさておき、モザイク胚の移植からでも
妊娠・出産は正常胚と変わらない部分もありますし、またその後の先天異常などはないということです。
これには、様々なことが関係していると思われますが、
大きなところでは検査している細胞が、将来胎盤になる細胞であり、
胎児になる細胞そのものを調べているわけではないことが影響しているのではないかといわれています。
着床前スクリーニングについては、様々な問合せがありますが、
日本では臨床研究中でこれからが期待されるものの、あくまでも「検査」であることは忘れてはいけません。
培養環境や培養士の技術が高いことや今後の向上なくして、良い受精卵は得られません。
現時点では、良い培養環境を作ることが一番質の良い受精卵を得るための近道といえると思います。