高輪院では2018年3月から鍼灸治療を開始しまして、
非常に患者さんからのご好評の声をいただいています。
一方で、鍼灸治療なんて効果がないのでは?
と思われる方もいるのも事実です。
今回は鍼灸治療の最新研究を通じて、現在地と今後を考えてみたいと思います。
鍼灸治療による妊娠率向上はない?
Effect of Acupuncture vs Sham Acupuncture on Live Births Among Women Undergoing In Vitro Fertilization
A Randomized Clinical Trial
この治療では鍼灸治療を受ける方と偽の鍼灸治療を受けるグループの二つにわけて、
無作為比較化試験というものを行いました。
後述しますが、本来無作為比較化試験というのはとても信頼性が高いものです。
オーストラリアとニュージーランドの16の体外受精の治療施設で、
合計848名を対象として、ランダムに2つのグループに分け、
卵巣刺激開始6-8日目に鍼灸治療を施し
胚移植の前後にも行われました。
それによると
鍼灸治療を受けたグループと
偽の鍼灸治療を受けたグループとで、
妊娠率、流産率などに差が見られなかった
という結果を表しています。
鍼灸治療の難しいところは、体外受精などの西洋医学的発想と異なり、
直接的に配偶子に何かの影響を与えるという性格のものではないというところが前提としてあります。
そのため、現在の治療としては、
これまで移植でうまくいかなかった人
例えば内膜が厚くなりにくい人、
卵胞がうまく育たない人、
などのように「不調」を抱えている人に対して、
根本的なアプローチをすることで改善していこうというものです。
なので、無作為比較化試験という方法は非常に良い方法ですが、
本来は不調を抱えている患者さんの前後で見ていくとなお良いのかもしれません。
また、鍼灸の現在の課題はもう一つあり、
それは、鍼灸師の技術のばらつきや統一的な手法がないというところです。
日本では、そうしたばらつきをなくすためにJISRAM(日本生殖鍼灸標準化機構)という組織が発足されています。
実際に鍼灸師の腕前によって、発見できる不調も違えば、行える処置も変わります。
そうした技術のばらつきがこの研究では補正しにくいかもしれません。
従来通りのやり方では統合医療の成果は測りにくいとおもわれますが、
これからの研究が期待されます。