よくある質問

不妊治療の副作用 -卵巣過剰刺激症候群-

不妊治療の副作用について解説していきます。

妊娠率の高さから、まるで魔法のように思う方もいらっしゃるかもしれませんが、

そうではなく、やはり副作用もあるのが実際のところです。

その中でもよく語られる「卵巣過剰刺激症候群(OHSS)」について解説します。

 

卵巣過剰刺激症候群(OHSS)とは・・・


卵巣過剰刺激症候群(Ovarian HyperStimulation Syondrome=OHSS)は、

排卵誘発を行う際に使用される「排卵誘発剤」の副作用として代表的なものです。

卵巣が腫大し、腹水(胸水)貯留を引き起こす症状で、リスクや程度にもよりますが、

発症頻度は1~6%程度とされ、進行すると、血管内脱水⇒血栓症(肺塞栓、脳梗塞)の危険があります。

 

(通常)

 

(卵巣過剰刺激症候群のとき)

 

その他の症状としては、腹部膨満、腹痛、尿量減少、呼吸困難が挙げられています。

症状の程度についても、軽症、中等症、重症、危機的、の四段階で分けて考えられます。

 

特にリスクが高いのはどういう人?


卵巣過剰刺激症候群(OHSS)の発症リスクが高い方は、

  • 35歳以下、

  • AMH高値、

  • 多嚢胞性卵巣症候群、

  • やせている方

  • 卵胞数35個以上、

  • OHSSを発症した周期で妊娠した場合

などが挙げられ、多くの場合には、排卵誘発効果が高いゴナドトロピン療法(hMG-hCG療法)を行う場合に

発症されることが大半です。

 

対策は?そもそも回避できないの?


誤解を恐れずに書くと、昨今の不妊治療においては、軽度のOHSSの発症については、リスクを織り込み済みであるといわれます。

凍結技術の発達により、凍結融解胚移植の治療効率は格段に高まったこと、

採卵を行うことが女性に身体的・経済的にも負担が大きいこと

から一度の採卵でより多くの卵を採り、胚盤胞までいったものを全て凍結する(全凍結といいます)方法がとられています。

そのために軽度の発症であれば、理解をしたうえで排卵誘発剤を選択しているケースも少なくないのです。

 

そのほかの対策としては、

  • 血栓症のリスク状態を随時採血で確認する

  • 血栓症予防のための内服薬、点滴、ヘパリン注射などを行うことがある

  • 症状が重度の場合は、入院を要する

  • まれに、卵巣腫大による卵巣茎捻転による入院・手術

によって対応をしていきます。

個人差のあるものなので、異常を感じる方はすぐに医師に相談することはもちろん、

それ以外の方も排卵誘発を行う際にはよく相談して決定されるとよいでしょう。

 

京野 廣一

京野 廣一

投稿者の記事一覧

京野アートクリニック(仙台、高輪) 理事長
1978年に福島県立医科大学を卒業し、東北大学医学部産科婦人科学教室入局。1983年、チームの一員として日本初の体外受精による妊娠出産に成功。1995年7月にレディースクリニック京野(大崎市)、2007年3月に京野アートクリニック(仙台市)を開院し、2012年10月に京野アートクリニック高輪(東京都港区)を開院いいたしました。

妊活ノート編集部

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  1. 2021年 1月 24日

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