患者さんから良くいただくご質問で、
治療中は性交渉してはいけないですか?
というご質問をいただきますが、
とても良い内容ですね。
答えは、ぜひどんどんしてください。
というのが基本的な答えです。
もちろん、医師から別途指示があった場合には、それに応じますが、
原則として、どんどんしていただいて構いません。
目的はあくまでも妊娠することで、とても極端な表現をすれば、
体外受精実施中に自然妊娠してしまったとしても、かまわないと考えます。
こうした治療中の自然妊娠の可能性について、最新の論文をご紹介します。
不妊治療中にも自然妊娠の可能性がある
不妊治療を始められると、性交渉の回数ががくっと減ってしまったりというお声は非常に多くあります。
様々な要因の結果、そのような状態になる方もいれば、無意識的にしにくくなるという方もいるようです。
今回の論文では、実は不妊治療中であっても、軽度な原因の方については、25%以上の確率で自然妊娠に至る可能性を示しています。
R van Eekelen et al.,Hum Reprod 2018; 33: 919-923
この研究では、オランダで行われたINeS研究というもので、
原因不明性不妊および軽度な男性不妊の602組の方々を対象に、
12か月間での自然妊娠の可能性を調査しました。
INeS研究自体は、この602組のカップルを
ホルモン補充周期での単一胚移植・凍結融解胚移植3周期
自然周期での体外受精-胚移植6周期
卵巣刺激を伴う人工授精6周期
それぞれの治療効果を比較することを目的に行われました。
全体では、この602組のカップルのうち342組に妊娠が認められ、
そのうちの77組は自然妊娠によるものであったということです。
確率にして、24.5%の方に認められたということです。
不妊、の定義は、
1年間性交渉をしてきたけれども、授かれなかった方
が対象になるため、その定義に当てはまる方は、
ついつい自然妊娠することはないという風に、過小評価をしてしまいがちですし、
性交渉をすべて子どもを授かるための行為という風にとらえてしまいがちです。
治療を始めても夫婦仲良く、性交渉は継続してもらうことは、
妊娠への近道になる可能性がありますし、
治療を一時的に停止したりすることが、必ずしもマイナスに働くわけではないということです。
また、性交渉には副交感神経がかかわっており、様々なリラックス効果などがあるといわれます。
直接的な妊娠でなくとも、マイナスよりははるかにプラスが多いものと考えられます。
繰り返しになりますが、
Q:不妊治療中は性交渉してはいけないですか?
A:いいえ、どんどんしてください。
ということです。