基礎知識

不妊治療の副作用である血栓症を未然に防ぐために重要なD-ダイマーとは

不妊治療を行う上で、想定される副作用にはいくつかのものがありますが、

代表的なものでは、卵巣過剰刺激症候群と多胎妊娠ではないかと思います。

参考:不妊治療の副作用ー卵巣過剰刺激症候群

参考:不妊治療の副作用ー多胎妊娠

 

先天異常について危惧される方もいらっしゃいますが、

全体的にみても当院での調査で見ても、一般の先天異常率と何かが異なるということはありません。

当院では児のフォローアップを以前から精力的に行っております。

昨年のIVF学会では、その成果が認められ、最優秀賞を受賞しました。

第20回日本IVF学会学術集会 森本賞受賞

 

 

不妊治療の重大な副作用 血栓症


不妊治療による重大な副作用の一つに血栓症があります。

卵巣過剰刺激症候群(OHSS)の重症例にも認められますし、

OHSSが重症でない場合でも血栓症は起こりえますし、

発症した場合、場所によっては生命に危険を及ぼす可能性があります。

 

当院はこの血栓症のリスクを以前から重要視しており、

理事長の京野も様々なところで発表をしたり、文献を出しています。

 

血栓症を未然に防ぐための一つの指標および検査としてD-ダイマーというものがあります。

 

D-dimer(ダイマー)とは

Dダイマーとは血液の線溶現象を調べる検査で、簡単に言えば、D-ダイマーが上昇している状態というのは、

血栓が形成されているリスクが高いと考えられます。

生殖医療のみならず循環器などでもよく注目される指標であり、

悪性腫瘍、肝硬変症、大動脈瘤が認められる際などにも評価される指標の一つです。

また、加齢とともにD-ダイマーは上昇する傾向にもあるといわれています。

 

このように、血栓症のモニタリングとしてDダイマーは非常に有用です。

早期から検査を行い、且つこまめにモニタリングし、必要時早期から血栓症予防の薬(内服、注射)を開始することが有効かつ重要です。

血栓症を予防するために、治療開始前に問診とスクリーニング検査(血栓性素因を把握する検査も含む)を行っています。

スクリーニング検査については以下でも紹介しています。

スクリーニング検査の重要性と患者さまからのお手紙 HappyLetters Vol.64

必要に応じて、血栓症を予防する薬(内服、注射)を処方したり、総合病院を紹介するなど、適切な措置を講じます。

ただし血栓症の発症を完全に予防することは困難です。

ふだんから水分を多めにとって脱水を避け、適切な食生活や運動を心がけてください。

排卵誘発剤に限らず、ピル(プラノバール、マーベロン)や黄体ホルモン製剤の一部も血栓症のリスクが考えられます。

下肢の痺れや浮腫みなどの症状が気になる場合は、来院の際スタッフにお問い合わせいただくか、お電話でご相談ください。

 

血栓症を未然に防ぐ自覚症状

また、血栓症の発症には以下の症状(ACHES)と関連することが報告されています。

ACHESを感じたら、薬剤を中止し、救急外来を受診してください。

A:abdominal pain(激しい腹痛)

C:chest pain(激しい胸痛、息苦しい、押しつぶされるような痛み)

H:headache(激しい頭痛)

E:eye/speech problems(見えにくい所がある、視野が狭い、舌のもつれ、失神、けいれん、意識障害)

S:severe leg pain(ふくらはぎの痛み・むくみ、握ると痛い、赤くなっている)

 

 

不妊治療は一定のリスクがあり、その分リターンもある医療だと思いますが、

安心・安全かつ納得の医療を進めることが、今まさに求められていると思います。

何かご不安な点がありましたら、いつでもお問い合わせください。

 

妊活ノート編集部

妊活ノート編集部

投稿者の記事一覧

妊活ノート編集部です。医療現場での当たり前を、より分かりやすい情報としてお届けします。正しい知識を得ることで、一日でも早い治療卒業のサポートをしたいと考えています。

関連記事

  1. 喫煙と不妊に関する最新の見解
  2. 多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)と不妊予防について
  3. 食べ物と子宮内膜症 -お肉とお魚-
  4. 実際の初期検査の流れ
  5. 不妊と合併した子宮筋腫の治療
  6. [培養環境]酸素濃度(酸素分圧)について
  7. 新鮮初期胚移植と新鮮胚盤胞移植によって生まれた子どもの出生体重に…
  8. スクリーニング検査の重要性と患者さまからのお手紙 HappyLe…

ピックアップ記事

こちらも注目

PAGE TOP