不妊治療を行う上で、想定される副作用にはいくつかのものがありますが、
代表的なものでは、卵巣過剰刺激症候群と多胎妊娠ではないかと思います。
先天異常について危惧される方もいらっしゃいますが、
全体的にみても当院での調査で見ても、一般の先天異常率と何かが異なるということはありません。
当院では児のフォローアップを以前から精力的に行っております。
昨年のIVF学会では、その成果が認められ、最優秀賞を受賞しました。
不妊治療の重大な副作用 血栓症
不妊治療による重大な副作用の一つに血栓症があります。
卵巣過剰刺激症候群(OHSS)の重症例にも認められますし、
OHSSが重症でない場合でも血栓症は起こりえますし、
発症した場合、場所によっては生命に危険を及ぼす可能性があります。
当院はこの血栓症のリスクを以前から重要視しており、
理事長の京野も様々なところで発表をしたり、文献を出しています。
血栓症を未然に防ぐための一つの指標および検査としてD-ダイマーというものがあります。
D-dimer(ダイマー)とは
Dダイマーとは血液の線溶現象を調べる検査で、簡単に言えば、D-ダイマーが上昇している状態というのは、
血栓が形成されているリスクが高いと考えられます。
生殖医療のみならず循環器などでもよく注目される指標であり、
悪性腫瘍、肝硬変症、大動脈瘤が認められる際などにも評価される指標の一つです。
また、加齢とともにD-ダイマーは上昇する傾向にもあるといわれています。
このように、血栓症のモニタリングとしてDダイマーは非常に有用です。
早期から検査を行い、且つこまめにモニタリングし、必要時早期から血栓症予防の薬(内服、注射)を開始することが有効かつ重要です。
血栓症を予防するために、治療開始前に問診とスクリーニング検査(血栓性素因を把握する検査も含む)を行っています。
スクリーニング検査については以下でも紹介しています。
必要に応じて、血栓症を予防する薬(内服、注射)を処方したり、総合病院を紹介するなど、適切な措置を講じます。
ただし血栓症の発症を完全に予防することは困難です。
ふだんから水分を多めにとって脱水を避け、適切な食生活や運動を心がけてください。
排卵誘発剤に限らず、ピル(プラノバール、マーベロン)や黄体ホルモン製剤の一部も血栓症のリスクが考えられます。
下肢の痺れや浮腫みなどの症状が気になる場合は、来院の際スタッフにお問い合わせいただくか、お電話でご相談ください。
血栓症を未然に防ぐ自覚症状
また、血栓症の発症には以下の症状(ACHES)と関連することが報告されています。
ACHESを感じたら、薬剤を中止し、救急外来を受診してください。
A:abdominal pain(激しい腹痛)
C:chest pain(激しい胸痛、息苦しい、押しつぶされるような痛み)
H:headache(激しい頭痛)
E:eye/speech problems(見えにくい所がある、視野が狭い、舌のもつれ、失神、けいれん、意識障害)
S:severe leg pain(ふくらはぎの痛み・むくみ、握ると痛い、赤くなっている)
不妊治療は一定のリスクがあり、その分リターンもある医療だと思いますが、
安心・安全かつ納得の医療を進めることが、今まさに求められていると思います。
何かご不安な点がありましたら、いつでもお問い合わせください。