ヒトに元来備わっている機能として、
Nk細胞(ナチュラルキラー細胞)というものがあります。
NK細胞は血液内に存在し、自然免疫として、がん細胞やウィルスなどを攻撃して排除する働きをします。
そのため、自然に(ナチュラル)に殺す(キラー)細胞ということで、NK細胞と呼ばれます。
物騒な呼び名に聞こえますが、私たちの体にとって非常に重要な働きをしており、欠かせないものです。
最近では、特にがん治療の免疫療法などで注目されているようですが、
元来、不妊、特に反復して着床しないというような方との関係があるのではないかと考えられています。
NK細胞と不妊について
簡単に言えば、NK細胞の中には、攻撃・排除のために働きが強い細胞と、弱い細胞があります。
一般にNK細胞が問題になるのは、その活性度が低いときで、
その場合には、ウィルスに感染しやすかったり、がんにかかりやすくなると考えられています。
不妊治療の中で問題になるのは、逆の場合です。
血液中のNK細胞が子宮内膜へ移動して、定着すると考えられていますが、
子宮内膜のNK細胞は攻撃・排除のための働きが弱い細胞が主であり、
受精卵や胎児を保護するように働くと考えられています。
攻撃・排除のための働きの強いNK細胞が子宮内膜に定着してしまうと、
受精卵や胎児を攻撃してしまい、着床や妊娠継続を阻害するのではないかと考えられています。
実際に、習慣性流産の患者さんや、体外受精での反復着床不全の方などは、
NK活性が高い(攻撃の強いNK細胞が多い)ことがいくつかの研究では報告されています。
NK細胞活性が高まる原因と治療法
NK細胞活性が高まる原因
自然免疫の一つであるNK細胞がなぜ高まるのか。
統一的な見解はありませんが、興味深いのは、NK細胞活性が高まるタイミングの一つとして、
スポーツ、夫婦喧嘩、などの過度のストレスやプレッシャーにさらされているときが上げられています。
これらは短期的なものですが、習慣性流産や反復着床不全ということになると、
長期でのストレスがかかることから、Nk細胞活性が高まる一因ともなってしまうのです。
NK細胞活性を低下させるための治療法は
NK細胞活性を低下させるための治療には様々なものがあります。
ヘパリン療法やガンマグロブリン療法、などもありますし、
ステロイドホルモンの内服なども考えられています。
先に書きましたように、心理的なストレスも大きな原因となることから、
心理カウンセリングを受けることも十分確かな治療と考えられています。
当院で体外受精を行う方で利用の多い、移植後のカウンセリングは無料としております。
妊娠判定が陽性の場合も陰性の場合も、大きな変化を迎えることになりますので、
しっかりサポートできればと考えたためです。
NK細胞活性が高い場合に、どのような治療が効果があるのか、
不妊との関係はあるのか、ということについて、最終的に統一した見解には至っていませんが、
反復して着床しない、流産を繰り返してしまうというような場合には、
一度検査をしてみると良いと思います。
検査は血液検査で行うことができます。
当院の場合では、土日祝日は検査ができませんので、ご注意ください。