流産は一定の確率で起こるものではあります。
とても極端な言い方をすれば、仕方ないということなのかもしれませんが、
その苦痛を受けられた方にとってみれば、それで済ませられる話ではないでしょう。
「妊娠中にストレスがあったから流産したのではないか」
というようなお話もしばしばお聞きします。
今回はこのストレスと流産の関係について、紹介したいと思います。
妊娠前のストレスと流産の関係
ストレスと妊娠あるいは、習慣性流産の方とストレスとの関係については、
以下で紹介しています。
今回は、妊娠前のストレスと流産に関係はあるのか、ということについて紹介します。
Biomarkers of preconception stress and the incidence of pregnancy loss
Human Reproduction, Volume 33, Issue 4, 1 April 2018, Pages 728–735,
この研究はアメリカで行われたLIFEスタディという前方視的研究です。
何度か紹介をしていますが、前方視的研究というのは
一般に行われている多くの結果やデータを後から振り返る後方視的研究と比べて、とても信頼性が高いと考えられています。
ストレスレベルを測定するのに、唾液中のコルチゾールとαーアミラーゼ濃度が用いられます。
これらの濃度と流産の関連性があるのかないのかを見ようとしたのがこの研究です。
LIFEスタディの対象者は501組、そのうち344組が妊娠し、そのうち337組が唾液中のコルチゾールとαーアミラーゼ濃度が測定されていました。
この337組のカップルのうち、女性と男性のパートナーの年齢の中央値はそれぞれ29歳と31歳でした。
高齢になることに伴う染色体異常が起こる可能性は低いと考えられます。
また、ほとんどの女性は非ヒスパニック系の白人(83%)であり、高等教育を受けていました。
337件の妊娠中に97件の妊娠喪失が報告されていますので、およそ28.7%での流産の発生となります。
流産時の妊娠期間は平均で6週5日でした。
当院でも紹介しているデータにも、若年でも20-30%程度の確率で流産は発生すると紹介していますので、
このデータでも同様の数値が示されています。
この研究の結果を要約すると、唾液中のコルチゾールとαーアミラーゼ濃度と流産の関係には関係がないとしています。
ストレスについては、実に多くの議論がされており、まだまだ結論にいたるものではありませんが、
ここで言えることは、流産したことを妊娠前の生活やストレスにすぐに結びつける必要はないということかと思います。
もちろん、明らかに悪影響な食生活や喫煙などに関してはやめていただくべきだと思います。
しかし、化学的に一定頻度で起こると言っても、何か原因を見つけたり、
そこに意味づけが必要な場合もたくさんあると思います。
当院では心理カウンセリングも遺伝カウンセリングもご用意していますし、
このブログでもいつでもご相談いただけるようにしています。
お気軽にご利用いただければと思います。