当院にはPCOSの方が多くいらっしゃいますが、
PCOSの薬剤の選択についていくつか紹介したいと思います。
PCOS患者さんに使用する薬剤について
PCOSに使用される薬剤は、クロミッドかフェマーラ(レトロゾール)と考えられますが、
まず一つ研究を紹介したいと思います。
New England Journalという雑誌がありますが、非常に世界的にも権威のある雑誌です。
そこで過去掲載された内容を紹介します。
Letrozole versus Clomiphene for Infertility in the Polycystic Ovary Syndrome
(多囊胞性卵巣症候群における不妊症に対するレトロゾールとクロミフェンとの比較)
※日本語で記載があるので一般の方にもわかりやすいです※
この研究は二重盲検多施設共同試験で行われました。
つまり、どちらの薬剤を服用しているか、ご本人もわからない状態です。
女性 750 例をフェマーラ投与グループまたはクロミッド投与グループに 1:1 の割合で無作為に割り付け,最大5周期の治療を行いました。
排卵と妊娠を確認するための受診日を設定し,妊娠した女性については経過を追跡しました。
参加者は 18~40 歳,
少なくとも片方の卵管が開存しており,
子宮腔が正常で,
精子濃度が 1,400 万/mL 以上(男性因子なし)
一定期間での性交回数が行われました。
結果として、生児獲得率がフェマーラ投与群のほうが高いという結果が得られました。
(374 例中 103 例:[27.5% 対 376 例中 72 例:[19.1%)
先天奇形全体に有意差は認められなかったが,
レトロゾール群では重大な先天奇形が 4 例認められたのに対し,クロミフェン群では 1 例であった。
と報告されています。
このことから、世界的にはPCOSの第一選択はフェマーラという方向性が示唆されています。
一方で別の意見もあります。
上記にもあった先天奇形が過去にフェマーラでは問題になったことがあったためです。
(現在では、多くの安全な出産の例が報告されており、安全性は確保されていると考えられます)
フェマーラの元の使用対象と目的は、閉経後の乳がん患者です。
そのため目的外処方ということになり、日本での治療では「自由診療」ということになります。
フェマーラを使用すると、周期全体の検査に係る費用もすべて自費となりますので、
かなり高額になることが否めません。
一日でも早く生殖医療に利用できる標準的な薬として、
フェマーラが登録されることを願います。
それまでは、クロミッドとフェマーラはこうした情報を開示しながら、
患者さんにお選びいただくことになるのだと思います。