様々なところで、解説されているフローラ(細菌叢)。
当院では、子宮内の細菌叢検査も実施していますが、
最も有名なフローラといえば、腸内フローラではないでしょうか。
この腸内フローラは実は全員が同じではなく、
民族ごとに異なるタイプがあることが報告されています。
腸内フローラの種類:エンテロタイプとは
エンテロタイプについて考える前に、腸内フローラの流れを考えていくと、
確かに民族ごとに異なる細菌叢環境になるのは理解しやすいと思います。
私たちが摂取する食事は、胃に運ばれ、胃酸によって消化され、小腸に運ばれていきます。
分子構造の大きなものについては、吸収しやすい分子に分解していく必要があります。
例えば、たんぱく質がアミノ酸に分解されていくようにです。
腸内細菌には、消化を促進する働きもあります。
腸内細菌には、善玉菌や悪玉菌に加え、その時々で善玉菌にも悪玉菌にもなりうる日和見菌があり、
これらが集合して、細菌叢(叢とは村と同じ意味です)を形成しています。
こうした消化プロセスと共に細菌叢があるために、
国や地域による違い、主食による違いが出てくるということです。
日本人で言えば、海苔や納豆などを食べることもありますが、世界的には特殊です。
そのため、外国人の方が海苔を食べても、消化されずにそのまま排出されてしまうということが知られています。
こうした特殊な食文化が腸内細菌とは密接にかかわっているということです。
エンテロタイプに話を戻します。
Enterotypes of the human gut microbiome
Nature volume 473, pages 174–180
この論文で報告されているのは、どのようなタイプの細菌が多いのかによって、
バクテロイデスタイプ:中国人や欧米人に多いとされ、主に肉食が中心の食生活を送る国に多い。
プレボテラタイプ:中南米や東南アジアに多いとされ、主に炭水化物(穀物)を中心にした食生活を送る国に多い。
ルミノコッカスタイプ:日本人や北欧に多いとされる、上記2グループの中間的なもの。
に分けられます。
また、遺伝的な要因にもよって、腸内環境には変化があることが知られていますし、
ストレスと腸内フローラの関連性があることも数多く報告されています。
そのため、最近になって考えられることは、仮に地中海食が非常に良いということであっても、
全員にとって良いわけではなく、個人差が出る可能性があるということです。
一方で、腸内細菌叢に悪い、と考えられているものは
・抗生物質(日常的に摂取していると)
・食品添加物(食物の発酵、つまり細菌の増殖を防ぐ力がある)
があげられます。
そしてストレスも悪影響です。
この点については、万国共通で考えられる「悪いこと」なので、
食生活に不安がある方は見直すきっかけにしていただければと思います。
ヒトゲノム解析研究技術が大きく発展し、様々な遺伝子が解析されるようになりました。
一人ひとりのフローラタイプみたいなものが判別されていく日もそう遠くはないと思います。
自分に最適で、健康的な食事を気持ちよくしていたいものですね。
また、フローラ関係で読んでいて面白かったのは以下の本でしたので紹介します。