当院では、今年から前例に対してタイムラプスシネマトグラフィーによる観察を導入し、
より良い胚の選定を行うよう努めています。
今回は、初期胚時に観察されるフラグメンテーションと子宮内膜の関係について
ご紹介したいと思います。
初期胚におけるグレード(旧)の評価
胚盤胞(受精後5日後まで発育したもの)のグレードとしては、
当院ではガードナー分類を用いています。
また、初期胚における分類では、卵割球の状態とフラグメンテーションで判断をいたします。
割球が均一であるかということに加え、
フラグメンテーションの発生の割合を見ていきます。
こちらの場合では卵割球が不均一で、
フラグメンテーションが多数という風に考えられます。
初期胚は、細胞1つ1つの大きさが均一化どうか、フラグメントがどの程度あるのかで評価します。
ただし、初期胚での評価は、あくまでも、卵の状態の目安を示すためのものであり、
必ずしもその後の胚発生と一致しないことがあります。
このため、当院では、「グレード○」といった表現は通常使用いたしません。
初期胚の状態と子宮内膜の環境の関係について
今回は、初期胚と子宮内膜の間質細胞の動きの関係性について調べた研究を紹介します。
High-quality human preimplantation embryos actively influence endometrial stromal cell migration
Berkhout RP et al.,J Assist Reprod Genet. 2017 Dec 28
この研究では、
高品質な初期胚をフラグメンテーション発生20%以下
低品質な初期胚をフラグメンテーション発生20%以上
と分け、
そこから得られた胚培養液を、
子宮筋腫などの良性疾患で摘出された子宮から、子宮内膜を採取し、
間質細胞を抽出したところへ添加し、子宮内膜細胞の連動性や変化を観察しました。
この研究によると、
胚の発生段階(初期胚や桑実胚など)とは関連せず、
女性の年齢の影響を受けることなく、
一貫してフラグメンテーションの低い胚が子宮内膜の間質細胞の動きを促進した
という結果が発表しています。
彼らが言うには、良好な胚は子宮内膜は積極的に相互作用を起こし、
着床しやすい環境を作ると考えられるということです。
一方で、前述のように、初期胚のグレード評価は絶対的なものではなく、
初期胚のグレードが低くとも、良好な胚盤胞が得られると考えられています。
受精卵のみならず、子宮内膜環境、また、妊娠・出産というところまで含めた、
さらなる大規模な研究が今後期待されます。