治療以外に自分たちでできることはないでしょうか
最も多くいただくご質問の一つです。
基本的なお答えとして、
健康的な食事・運動・睡眠をとること
という風にお答えしています。
例えば、ビタミンDなどのようにそもそも不妊症である方の多くに、
何か栄養的に足りない部分などの「健康でない」状態は多くみられます。
今回は、ヨーロッパで行われている研究で、健康的な食事をされている方のほうが、
体外受精以上の治療において良好な妊娠率・出産率が得られるという報告を紹介したいと思います。
地中海食は妊娠率を向上させる可能性がある?
そもそも地中海食とはなにか、ということですが、
Wikipediaによると、
イタリア料理、スペイン料理、ギリシア料理など地中海沿岸諸国の料理である。記憶能力および健康に対する良好な研究結果が繰り返し報告されている。
地中海食という料理はなく、地中海沿岸諸国の伝統的な食事のことである[2]。オリーブオイル、全粒穀物、野菜、果物、豆、ナッツが豊富で、チーズとヨーグルトは頻繁に食され、
魚も食されるが、肉、鳥、卵、菓子の消費は控えめである[2]。また赤ワインも適度に飲まれる[2]。オリーブオイルや魚介類には多価不飽和脂肪酸が豊富に含まれる。
と言われています。
これまで脂肪酸関係については、以下のような内容についても紹介しています。
また、男性不妊にも影響があることで知られています。
さて、今回の研究について簡単に紹介したいと思います。
Adherence to the Mediterranean diet and IVF success rate among non-obese women attempting fertility
Human Reproduction, Volume 33, Issue 3, 1 March 2018, Pages 494–502,
この研究では、
2013年11月から2016年9月までの期間において、アテネの不妊治療施設において、
初めてのIVF治療を行う肥満症でない22-41歳の女性244名を対象として、
食生活と妊娠の関係を解析するために、前向き研究されました。
食生活のアンケートの結果、地中海食スコアでグループを分け、
その後の妊娠率等を比較しています。
A:地中海食スコアLow(≦30、79名)
B:地中海食スコアMiddle(31-35、79名)
C:地中海食スコア(≧36、86名)
にて分類しています。
中間指標として、採卵数や受精率、胚盤胞の質を
最終指標として、妊娠率や出産率を比較検討しました。
中間指標にと、地中海食スコアとの間には何ら関係が見られなかったものの、
最終指標である妊娠率については、
A群とC群を比較すると、29.1%と50.0%
ということで大きな差が見られました。
また、同様に生存率についても、
A群とC群を比較しても26.6 vs 48.8%
という大きな差が見られました。
また、年齢によるセグメントで、35歳以上と35歳未満の年齢層を分けて比較したところ、
35歳未満の方の地中海食スコアの高低と妊娠率などの相関関係があることが確認され、
35歳以上の方では相関関係が見られなくなるということも結果として発表されています。
特に35歳未満の女性においては、地中海食スコアが5ポイント増加すると、
臨床的妊娠率や生存率に対して、最大2.7倍に増加する可能性があるということでした。
妊娠は単一の要素で成立しているものではありませんが、
この研究では35歳未満(卵子の質が良いであろう)方々において、
食生活の差による妊娠スコアの差を解析しています。
BMIのみならず健康的な食事での身体の管理は非常に重要な要素と考えられます。
最後に復習ですが、地中海食の特徴は、
- 全粒穀物、季節の野菜・果物を豊富に摂る
- 豆類、ナッツの摂取量が多い
- 昼食がメイン
- 油の摂取はオリーブオイルが主体 (飽和脂肪酸が少ない)
- お肉は食べるとしても鶏肉がほとんど
- 魚介類を習慣的に摂取する
- 乳製品の摂取量は少ないか適量
- 卵の摂取量は、週4個未満
- 加工食品の摂取は最小限
というような特徴があげられます。
すべてをいきなり実施するのは難しいとしても、
何か一つでも意識をすることで、健康的な身体を作っていければよいと思います。