本日は、東京にて、生殖心理学会の学術集会が開催されました。
テーマはやはり昨今非常に注目されている、
「がん・生殖医療」
いわゆる
妊孕性温存
に関する部分がメインとなり、活発な意見交換がされる会となったように感じています。
今回は、あまり専門的な部分ではなく、患者さんとの情報共有と意思決定支援についての紹介をしたいと思います。
Shared Decision Making(シェアードディシジョンメイキング)という考え方
本日の会の冒頭は、獨協医科大学の杉本先生による講演でスタートいたしました。
その中でも触れられた内容ですが、医療における情報提供は、これまでいくつかのステップを踏んできています。
パターナリズム
極端な表現をすれば、医療者=上位の存在、ととらえ、医療者の言うことは絶対ととらえられがちな状況です。
医師が思う通りに、治療計画を組み、これに対して患者さんは非常に従順に従うようなケースです。
これまでよくあったことではありますが、
「先生に嫌われたら治療してもらえないんじゃないか」
と考えて、疑問も何も口にできないような状況です。
インフォームドコンセントの勃興
これに対して、患者さん側の権利を主張し、医療者からの説明責任と患者の権利を盛んに喧伝していた時期もあります、
同意書などに非常に重点が当てられ、患者さん=お客様、という考えの元、極端な例では、患者様=神様、というような図式さえ
ありました。
医療者は患者さんの要望をなんでも聞くのです。
しかし、それは同時に責任も含めて患者さんに丸投げしてしまっているような状況とも言えますので、
決して健全ではないと考えます。
シェアードディシジョンメイキングの時代(今ここです!)
そして今、次のステップに来ています。
シェアードディシジョンメイキングとは、どんなものか、簡単に言えば、
医療者は患者さんに十分でわかりやすい表現での情報提供を行い、
患者さん自身も知識を身に着け、相互に歩み寄って意思決定していく、
ということだといえます。
生殖医療は、きわめて専門的な医療です。
患者さんがドクターと同じように知識を持つことは非常に難しい一方で、
あくまでもその患者さんたちと生まれてくる子供たちのための医療ですので、
利害が対立するような形ではありません。
まさに、こうした互いの歩みよりが今後ますます重要になることと思います。
また、本日の講演で杉本先生が仰っていたポイントを以下に記載します。
ゆとりをもって、
簡単で医学的でない表現を用いて、
できるだけ絵などを見せて説明し
開示すべき情報は限定して、繰り返し伝える
相手からのteach backを受け
知らない、ということでの恥をかかせることなく
対話していくということではないかと解釈いたしました。
当院では、医療の質と同時に、待ち時間短縮にも非常に力を入れておりますので、
これを医師だけで行うのでなく、看護師、培養士、医療事務、検査技師など様々なスタッフの連携で、
患者中心の医療を追及していければと思います。