ドラマの中の治療が少し進んできた雰囲気ですね。
いくつか印象的なシーンについて、ピックアップしてみたいと思います。
「タイミングから人工授精へ進みましょうか」
という医師の言葉に対して、いよいよ覚悟を決めようとする深田恭子さんですが、
家に帰ってから松山ケンイチさんに
「第三者の手が加えらるのはな~」
と言われてしまいました。
※前回分(第3話)の内容は以下から確認いただけます。
正しい知識を持つことが納得のいく選択への第一歩
人工授精は「人工」という言葉がついているのでどんなに先進的なことなのだろうと感じますが、
「子宮腔内精子注入法」
と言い換えた方がわかりやすいと思います。
世界では1776年に初めて実施されたと言われています。
細い管で子宮内に元気の良い精子を注入し、精子が卵子の近くに行きやすくしてあげるものです。
精液は精子が集まってできていますが、そればかりではありません。
精漿という体液がほとんどで、雑菌などの不純物もたくさん含まれています。
これをそのまま子宮の中に入れると感染症を引き起こすことが懸念されるので、不純物を取り除き、元気な精子だけ取り出して子宮内に注入する、
これが人工授精です。
当日の施術は、外来であっという間に終わります。
この施術により期待したいことは、少しでも多くの精子に卵管の先端の方まで到達してもらい、卵子と出会える精子を多くするということです。
タイミングを繰り返してもなかなか妊娠の兆候がない、という場合には試してもよい方法と思われます。
また、タイミングを巡ってけんかになってしまうカップルにもおすすめの方法でもあります。
言葉を知っていても内容を知らないと尻込みしてしまいますが、
内容を知ってみると感じ方が変わってきますので、
治療や検査もどのようなことをするのかということを具体的に理解して、
それから検討していただきたいと思います。
また、人工授精は確率的に5~6回が限界とも言われています。
実際に人工授精で妊娠する方の80%は3回目までに妊娠しているという統計データもあります。
もちろん7回目、8回目とチャレンジすることも問題ないのですが、
妊娠につながる可能性は低い、という現実があります。
この点も治療を始める前に知っておくべきポイントですね。
世代間の境界が起こす認識の相違
もう一つ、「信頼しているお母さんに治療のことを伝えたら拒絶されてしまった」というエピソードがありましたね。
「自然じゃない妊娠はね…。人工授精の後は、体外受精ってなるんでしょ。体外受精で産まれましたって、人に言える?」
深田恭子さんは
「いえるよ~。」
と答えていましたが、
実の母に言われる言葉としては非常にショックです。
(ちなみに日本産科婦人科学会の最新の報告では、赤ちゃんの19人に1人は体外受精で産まれています。)
伝えようか悩んで、やっとの想いで話してみたのに・・・
ここがポイントです。
自分自身はずっと悩んで考えていることなんです。
しかし、お母さんは同じだけ悩んでいないんです。
知っている情報の量も違うし、考えた時間の量も違う。
いきなり話題に出ても、話しがかみ合わないのが当然です。
実の母娘は遠慮がなくなりがちですし。
思い切ってお母さんに話してみたら思いのほか共感してもらえなかった、
ということは、しばしばお聞きします。
こうした場合に心理学的な概念として「世代間の境界」があります。
これは、世代が異なれば受けてきた教育・育った文化が異なるので、
違った価値観を持っていて当然、ということです。
自分たちの世代では珍しいことでなくなりつつある生殖医療も、親世代にとっては未知の物であって不思議ではありません。
世界で初めて体外受精によって誕生したルイーズブラウンさんのことはよく知られていますが、
当初は「試験管ベビー」と言われ、たくさんの誤解があったと思われます。
しかし彼女は健康に育ち、自然妊娠で赤ちゃんを出産しました。
今、生殖医療を必要としている世代の方々にとって、体外受精に対する偏見のような感覚は少ないのではないかと思います。
治療のことを伝えても理解してもらえなかったという事態は、
世代間の境界という観点から見てみるとある意味健全なことなのです。
相手が常に理解を示してくれることの方が幻想かもしれません。
相手から理解されなくても良い場合もたくさんあります。
そのあとのアプローチは色々考えられますが、親御さんの同意を得ないと治療はできないものではありません。
もっとも大切なのは夫婦間の同意です。
この優先順位を間違わず、軸足は夫婦の生活に置いていた方が良いかと思われます。
自分自身がどうしたいのかをよく見つめ実現していきましょう。
自分自身が幸せなら周りの人にも伝わりますし、周囲の方も理解してくれる可能性が高くなります。
さて、5回目のドラマの行方が気になりますね。