患者さまへお薬の説明をしている中で、時々出てくるものの1つに、
「フェマーラは安全なのですか?」
という質問があります。
この質問についてお答えしたいと思います。
フェマーラの成り立ち
フェマーラの基礎的なことについては、以下でも解説しています。
さて、
フェマーラ(アロマターゼ阻害薬)は安全ですか?
というこの質問の奥には、
もともと乳がんの薬なのに、副作用とかないの?
という意味が込められているのではないかと推測します。
まず、その点から解説をすると、確かにはじめは乳がんのホルモン療法の治療薬として開発されましたが、
使用していく中で卵胞発育促進に関わる作用があることがわかり、
2001年頃から不妊治療の現場でもちいられるようになっています。
世界的にも様々な検証が重ねられ、その高い安全性は証明されていると考えてよいと思います。
しかしながら、日本の薬剤の効果効能の認可制度が非常に難しいもので、
なかなか認められるのに時間がかかるという点から、現在のような状態が続いていると考えたほうが現実に即していると考えられます。
そのため、適応外使用となりお薬代も自費になるという流れなのです。
フェマーラの児への安全性の確認
上記のようなものに加えて、子供にはなにか影響があるのではないか、という
不安にも似たコメントをいただくこともありますが、この点についてもお答えしたいと思います。
Hum Reprod. 2017 Jan;32(1):125-132.
No increased risk of major congenital anomalies or adverse pregnancy or neonatal outcomes following letrozole use in assisted reproductive technology.
この論文は日本の論文で、日本産科婦人科学会のデータベースを使用して、調査されたものです。
(簡単に言えば、日本で得られる最も多く正確なデータである可能性が高いです)
2011年から2013年の間に行われた新鮮胚移植によって妊娠した方、
詳細は、
自然周期3136周期(以下、自然)と
フェマーラ使用周期792周期(以下、レトロゾール)の
妊娠予後を後方視的に調査し、比較したというものです。
これによると、
流産のリスクはフェマーラ使用周期において有意に低い(フェマーラ12.2%:自然26.4%)
早産、低出生体重、在胎週数や先天異常赤ちゃんの先天異常については有意差がなかった
という報告となっています。
このことから、フェマーラを使用することで赤ちゃんの先天異常が高まるということはなく、
むしろ流産率が低下するということが言えると思います。
当院でも軽度な卵巣刺激にもよく用いられますが、ぜひ安心してご使用いただければと思います。