最近問い合わせが多い内容が栄養素に関するものです。
以前、オメガ3脂肪酸(DHA/EPA)について解説し、
今でも多くの方からお問い合わせがあります。
今回はオメガ3脂肪酸が持つ抗炎症作用が不妊治療にどのように影響を与えるか、
ということについて解説します。
オメガ3脂肪酸の抗炎症作用が不妊治療に効果的?
オメガ3脂肪酸には抗炎症作用があります。
子宮内膜症などの症状は、一般的に「炎症」と考えられており、
この炎症を抑える事が、治療に有効なのではないかと考えられています。
既に動物実験も実施され、一部で効果が認められています。
Fertil Steril. 2013 Feb;99(2):543-50
Dietary fish oil supplementation inhibits formation of endometriosis-associated adhesions in a chimeric mouse model.
この研究では、ヒトの子宮内膜を免疫の低下したマウスに移植して、
片方のグループにはふつうの食事を
もう片方のグループにはオメガ3脂肪酸が豊富に含まれている食品を与えて、
その症状を比較したというものです。
その結果、オメガ3脂肪酸を多く摂取した群が、子宮内膜症の癒着や病変が減少したという報告がされています。
動物実験であるため、ヒトで100%効果があるかの検証にはなりませんが、
1つの参考には十分なりうる研究だと考えられます。
また、イタリアの研究では、子宮内膜症患者とそうでない患者の食生活を比較した研究があります。
Am J Epidemiol. 2013 Mar 1;177(5):420-30
Dairy-food, calcium, magnesium, and vitamin D intake and endometriosis: a prospective cohort study
この研究では、ビタミンDなど含め、様々な検証がされていますが、
子宮内膜症であった504名と同数の子宮内膜症でない方への聞き取り調査から、
その食生活の違いについて研究したものです。
その結果によれば、子宮内膜症でない方は、
野菜や果物を多く摂り、肉やハム等の加工肉を抑えている
という傾向があるとも指摘をされています。
オメガ3脂肪酸は、体内では合成できないため、食事から摂取しなければなりません。
そのために食生活の改善やサプリメントでの摂取が推奨されています。
食品としては、
えごま油、シソ油、亜麻仁油、くるみ、緑黄色野菜、豆類などに豊富に含まれています。
その中でもDHAやEPAということであれば、生のサバ・イワシ・サンマ・カツオなどの青魚やマグロ、ウナギ、ハマチなどが挙げられますが、
いわゆる昔ながらの日本人の魚を中心とした食生活であれば、十分に摂取できるとも考えられます。
また、最近の研究では、単にオメガ3脂肪酸を摂取するということだけでなく、
オメガ6脂肪酸やトランス脂肪酸などを取らない、あるいはオメガ3脂肪酸とのバランスが大切なのではないか、
という研究も進んでいます。次回はそうした内容の紹介もしたいと思います。