今回は理事長の京野より新年のご挨拶と共に最新の当院の治療に関わる論文について紹介いたします。
Hashimoto T et al. Efficacy of the endometrial receptive array for repeated implantation failure in Japan: A retrospective, two-centers study.(Reprod Med Biol 2017;16:290-296)
Moreno I et al. Evidence that the endometrial microbiota has an effect on implantation success or failure. (Am J Obst Gnnecol. 2016;215:684-702)
新年明けましておめでとうございます。
今、話題沸騰の着床とERA(子宮内膜受容能力検査)・子宮内環境に関する内容です。
ERA(子宮内膜受容能力検査)に関する有効性
Hashimoto et al.ではERAの有効性について検証しています。
凍結融解胚盤胞移植3回以上妊娠しなかった患者50名の内、12名(24%)が子宮内膜のタイミングがずれていました。
通常、ホルモン補充周期で黄体ホルモン(P)を投与して、5日目に移植します。12名の方の内、1名がホルモン剤の使用が不適切で、結果は増殖期であった。
それ以外は8名が12-24時間遅く、3名が12-24時間早く移植するよう指示がでた。
Non-receptive の10名に、その人にあったタイミング(Personalized-ET)で移植したところ、5名が妊娠した。
その内、2名が流産した。
2名の内1名が絨毛検査で染色体検査をしたところ、染色体異常を認めた。
妊娠は受精卵側の要因が70%、子宮内膜側の要因が30%と言われます。
したがって正常な胚を移植した場合に、このERAはさらに効果を発揮できると考えられます。
他の論文をあわせて総合的にみると、
3回良好胚盤胞を移植しても、着床しない場合、30%はタイミングがあっていない
と判断しても良いと思います。
その個人にあった適切なタイミングで移植することにより、妊娠率が向上します。
費用:15万円+税
子宮内フローラに関する海外での情報
Moreno et al.の論文は子宮内フローラに関してです。
ラクトバチルスが90%以上占めていると、妊娠率が高いという論文です。当院でも検査可能です。
費用:30,000円+税
当院ではなかなか良好胚盤胞を移植しても妊娠しない場合、
1)ERA
2)子宮内フローラ
3)ビタミンD
4)銅+亜鉛
5)慢性子宮内膜炎(CD138)
6)子宮鏡
などを総合的に判断して治療にあたります。
CD138免疫染色による子宮内膜炎
Hum Reprod 2015; 30: 323
①106名の反復着床不全患者に対して、子宮内膜炎の検査を行い、70名が慢性子宮内膜炎と診断された
②抗生剤を投与して、3/4は治癒(A群)、1/4(B群)は子宮内膜炎が残った
③A群、B群ともに体外受精を行った際の結果を比較した
A群 | B群 | |
妊娠率 | 65.2% | 33.0% |
出産率 | 60.8% | 13.3% |
慢性子宮内膜炎に関する詳しい情報はこちらから
銅亜鉛検査
子宮内に銅が付着することで、着床不全になる
(厚生労働省調べ)
銅の推奨量は0.8mg/dayに対して、摂取量が1.07mg/day(過剰)
亜鉛の推奨量は8mg/dayに対して、摂取量が7.2mg(不足)
着床に適した環境としては、「銅↓亜鉛↑」の環境が望ましい
銅亜鉛検査に関する詳しい情報はこちらから
ビタミンD検査
ビタミンD不足(20ng/ml未満)になると、妊娠率は0.61倍になる
Fertil Steril 2014; 101: 447-452
その他、ビタミンDが不足することで、
AMHの低下、流産率の上昇などが報告されている
※注意※
脂溶性であるため、過剰摂取には要注意。
子宮内膜症の方のビタミンD摂取は逆効果となることも
ビタミンDと不妊に関する情報はこちらから
子宮内膜に関する研究は始まったばかりであり、発展途上です。
しかし、患者さんにとっての時間は有限ですから、有効であり、安全であることが確認されているものについては、
正確な情報提供をしながら、総合的に実施していけるようにしてまいります。