不妊治療を考えるうえで、意外とつまづくことが多いのが専門用語の多さ、だったりします。
不妊治療は時間がかかる治療であるため、医療者が患者さまに同じように知識を持つことを求めることがよくあります。
その中でも特に難しいといわれるのが、ホルモンに関するお話しです。
アルファベットやカタカナで同じようなものも多いため、混同されてしまいがちですが
整理された知識を持つことは速やかに治療を行う上でかかせません。
簡単に不妊治療や妊活と関係のあるホルモンについてまとめてみたいと思います。
下垂体ホルモン
下垂体は様々なホルモンの働きをコントロールしている部位です。
大きさはえんどう豆程度で、前葉と後葉からホルモンを分泌し、生体の機能維持を司っています。
この下垂体ホルモンの中で、不妊と関連性が高いものがいくつかあります。
FSH(エフ・エス・エイチ)
FSH(エフ・エス・エイチ)は卵胞刺激ホルモンとも呼ばれ、卵巣における卵胞の発育に働きかけます。
男性の場合には、睾丸に働きかけ精子の生成を促進します。
標準的な値は?
卵胞期の基礎値は3.5~12.5、排卵期には4.7~21.5、黄体期では1.7~7.7、
そして閉経期では25.8~(mIU/ml)ということで変動します。
測定する時期は?
基礎値を測定するには、月経3-7日目に検査をする必要があります。
高いとどうなる?
排卵障害や卵巣性無月経や早発閉経が考えられます。
低いとどうなる?
排卵障害や下垂体機能低下症が考えられます。
LH(エル・エイチ)
LH(エル・エイチ)は黄体形成ホルモンとも呼ばれ、卵巣での卵胞成熟と排卵を促し排卵後の黄体を刺激するという機能を持ちます。
男性については睾丸からの男性ホルモンの分泌を促します。
標準的な値は?
卵胞期の基礎値は2.4~12.6、排卵期には14.0~95.6と大きく変動し、黄体期では1.0~11.4、
閉経期では7.7~58.5 (mIU/ml)ということで変動しますが、基本的には10以下と考えていればよいと思います。
測定する時期は?
基礎値を測定するには、月経3-7日目に検査をする必要があります。
高いとどうなる?
排卵障害や卵巣性無月経や早発閉経が考えられます。
低いとどうなる?
排卵障害や下垂体機能低下症が考えられます。
PRL(プロラクチン)
PRL(プロラクチン)は乳腺刺激ホルモンとも呼ばれ、乳腺の発達と乳汁分泌を促します。
標準的な値は?
時期による差はないとされ、3.4~24.1(ng/ml)とされています。
測定する時期は?
時期は選びませんが、妊娠時には上昇します。
高いとどうなる?
高プロラクチン血症(本来、妊娠した時に上がるものが妊娠していないのに高まることで排卵障害を起こしてしまう)が疑われます。
また高値の場合には、下垂体腫瘍が疑われるケースもあります。
低いとどうなる?
下垂体機能低下症(分娩後のシーハン症候群)が疑われます。
TSH(ティー・エス・エイチ)
TSH(ティーエス・エイチ)は甲状腺刺激ホルモンとも呼ばれ、甲状腺ホルモンの分泌を促します。
甲状腺の病気があると排卵が起きなくなったり、黄体機能が低下して、不妊症・不育症の原因になったりすることがあります。
標準的な値は?
時期による差はないとされ、0.54~4.54(μIU /ml)とされています。
測定する時期は?
時期は選びません。
高いとどうなる?
甲状腺機能低下症(橋本病・亜急性甲状腺炎が疑われます。
低いとどうなる?
甲状腺機能亢進症(バセドウ氏病・亜急性甲状腺が疑われます。
FT3、FT4もよくみて総合的に見ることが欠かせません。
いかがでしたか。
これを見て覚えるということでさえ難しいことかと思います。
まずは簡単なところから理解してみましょう。
このほか性腺刺激ホルモンもありますが、まずはここまで整理してみましょう。