以前、体外受精以上の不妊治療(ART)との性比について解説をし、
非常に多くの方からの反響がありました。
今回は続編として、上記の③の日本の論文を元に精液所見と性比について紹介します。
精液所見と不妊治療で生まれる子どもの性別の違いについて
今回は日本の論文について紹介します。
Fertil Steril.2016 Apr; 105(4):897-904
Effect of semen quality on human sex ratio in in vitro fertilization and intracytoplasmic sperm injection: an analysis of 27,158 singleton infants born after fresh single-embryo transfer.
2007年から2012年の間に、新鮮胚による単一胚移植によって妊娠・出産された27,158の症例を
後方視的に研究しました。
数の多さからも分かるように、このデータは日本産科婦人科学会に集まってくる登録データを用いて行われました。
①体外受精:14,966名
②顕微授精:12,164名
③顕微授精(精巣内精子):646名
の赤ちゃんが得られており、その性別の比率を検証したものとなります。
改めてですが、この①から③は後半に向かうほど、重度の男性不妊症となっていきます。
精液所見に問題がなければ、体外受精(コンベンショナルIVF)、精液所見に問題ありの場合は顕微授精(ICSI)、
そして、射出精液に精子が認められない無精子症の場合には精巣内から精子を採取します。
各グループにおける性比
①体外受精グループ:53.1%
②顕微受精グループ:48.2%
③顕微受精(精巣内精子)47.7%
という結果となりました。
また詳細に見ていくと、
①の体外受精グループにおいては、精子無力症を含む精子運動率の低いグループ(40%未満)は、
正常精子と比較して有意に低い結果となりました。(精子運動率が悪いグループ:51.0% 正常なグループ:53.4%)
②の顕微受精グループについては、精子運動率による性比は関係が認められませんでした。
体外受精も顕微授精も精子数と性比についての関係は認められません。
また、この研究においては、胚盤胞移植と初期胚移植による比較も行っていますが、
以前ご紹介したものと同様に、胚盤胞移植の方が高い結果となりました。(胚盤胞52.9%:初期胚49.9%)
これは、体外受精のみならず、顕微授精においても同様の傾向を認めています。
参照: Maalouf WE et al. Effects of assisted reproductive technologies on human sex ratio at birth. Fertil Steril 101:1321-1325,2014.
日本では、性別の選択を行う事はできませんが、日本での体外受精の成功から35年が経とうとしている中、
多くの方々の治療を経てわかってきた一つの傾向という意味では、非常に重要なデータです。