子宮内膜の厚みが妊娠率と関係があることは広く知られており
以下でも解説しています。
子宮内膜の厚さと人工授精の成績を後方視的に解析し、研究した論文がありますので
紹介してみたいと思います。
人工授精の妊娠率と子宮内膜の厚さとの関係性
(Influences on endometrial development during intrauterine insemination: clinical experience of 2,929 patients with unexplained infertilit)で、
2004年から2011年までの2,929人の
原因不明の不妊症のために初回の人工授精を受けた患者を対象として
子宮内膜圧と妊娠率の関係について解析しています。
年齢は43歳未満として、総運動精子数としては800万以上を対象としています。
改めて、原因不明不妊の確認になりますが、ここの文脈に合わせて言うと、
男性の精液所見に概ね問題はなく、卵管の疎通性はあり、排卵もしているとする
(一般的な不妊検査でそれらしき不妊の要素が見当たらない)
という患者群となります。
そのうち466人(15.9%)が臨床的妊娠となりました。
子宮内膜の厚さが、4~10mmまでは妊娠率が増加し(4mmで10%〜10mmで19%)、
10mm以上では横ばいとなり大きな差はありませんでした。
この論文においては、
E2(エストロゲン)の上昇と子宮内膜の厚みが関係しており、それらの上昇は妊娠率に良い影響を及ぼしているということでした。
子宮内膜厚が4㎜から厚くなっていくほど、妊娠率は高まり、厚くなりすぎたことで妊娠しなくなるということはありませんでした。
一般に体外受精を考えるとき、受精卵側の要因と子宮内膜側の要因が検討されます。
人工授精ではそこまで考えられることは多くないかもしれません。
ただ、今後はこうした一般不妊治療においても、
①受精まで(卵管性不妊、排卵障害、頸管性不妊、男性不妊など)
②受精してから(卵子の老化や染色体異常など)
③着床するまで(子宮内膜環境)
を考えることも必要かもしれません。
子宮内膜の厚みが薄すぎる場合には妊娠率が低いことは事実なので、
不安な方は一度検査を受けてみてもよいかもしれないですね。