妊孕性温存について考える

小児がんに対しての妊孕性温存について

小児がん、というのは、小児がかかるがんの総称を指します。

その中でも多いものとしては、白血病が約40%を占め、脳腫瘍、骨軟部肉腫、神経芽腫などが挙げられます。

日本においては、年間で約2500人ほど発生しており、

15歳未満の人口1万から1万5千人に1人から1.5人という割合です。

 

小児の病死の順位としては第1位に挙げられています。

小児がんの特徴としては、臓器に限らず、全身のあらゆる部位から発生し、また進行がとても早いことが挙げられます。

そのため、初めての診察の時にはすでに遠隔転移をしているというケースも少なくないようです。

 

一方で小児がんの多くは化学療法や放射線療法に対する効果が極めて高いものが多いこともあり、

昨今の技術の発展によって70-80%近い方は治癒に至ると言われており、

小児のリンパ性白血病の予後は90%近くになってきているとも言われています。

そうした中で、小児がんサバイバーの方々の妊孕性温存には非常に注目が集まるようになってきています。

小児がんにおける治療や妊孕性温存について


 

小児がんの治療については、手術治療、化学療法、放射線治療、造血幹細胞移植などを組み合わせることで、

集中的に間断なく治療していくことが多くあります。

上記にも記載したように、初診時にすでに遠隔転移がみられる場合なども多いため、

診断から治療開始までの期間は極めて短く行われます。

 

この短い期間で

治療によって妊孕性がどれくらい失われるか

妊孕性温存を行うとしてどのような治療方法を選択するか

というような選択をしていかなければなりません。

 

男の子の場合の妊孕性温存)

大きくは思春期前思春期後かで分けられます。

男の子の場合適応となるのは主に精子凍結です。

しかし、思春期前の男の子の場合には、精子が作られていないため、

現時点で適応可能な妊良性温存療法はありません。

 

また、思春期後の場合には、自身での射精が可能であれば、精子凍結を行います。

自身での射精が難しい場合には、電気射精法やTESEの適応となる場合もあります。

 

女の子の場合の妊孕性温存)

女児の場合も思春期前なのか後なのか、が一つの判断基準となります。

妊孕性温存療法として考えられるのは一般的に、

受精卵凍結>卵子凍結>卵巣組織凍結

という考え方をされますが、小児の場合受精卵凍結というのは難しい選択肢です。

思春期前だと排卵していないというケースもあり、この場合には卵巣組織凍結となります。

また、排卵をしているという場合でも白血病など治療開始までの時間が限られている場合については、

卵巣凍結が適応となります。

時間的猶予がある場合には、卵子凍結が適応されます。

 

小児がんだからこそ、本人、家族に向けた倫理的配慮が欠かせない


小児がんの妊孕性温存には特有の倫理的な配慮が欠かせません。

というのは、小児と呼ばれる年齢の頃からお子さんはすでに自我を持っていることが多く、

その後の人生を考えると、自分自身での意思決定できたという事実が与える影響はとても大きなものとなります。

また、同様に保護者の方も含めた説明、同意形成も欠かせません。

一般に成人向けの説明では理解が追い付かないため、年齢に応じた説明内容であることが求められます。

こうした未成年との方との説明同意をインフォームドアセント、や成人への説明をインフォームドコンセントと呼びますが、

こうした倫理的配慮がきちんと施設内の倫理委員会などで多角的に考えられる必要もあるかと思います。

 

 

 

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