冬は妊娠しにくい、と一部で言われることがあります。
確かに、日本の統計上のデータを見ると1947年から2011年のデータを統計すると以下のようになります。
グラフによれば、1月と7-8月は多いのですが、
11月と12月は少ないという状態は確認できます。
数としての差は出ていますが、現時点では科学的にこれを証明できる根拠は今のところ明らかではありません。
ヒトには発情期がなく、いつでも妊娠可能なはずなのに、この差はなぜ出るのか。
いくつかのアプローチが試みられています。
①栄養素による差
季節によって影響を受けるものの1つに食物が考えられます。
例えば熱帯地方について言えば、雨季に食べ物が豊かになりますので、
その時期がより妊娠しやすいのではないかと考えられます。
②生殖機能への影響
特に男性の話にはなりますが、気温の高さが造精機能に影響を与えるのではないかとも考えられます。
③日照時間との関係性
日照時間と受精能力が関係しているのではないかと考える説もあります。
日照と影響があるものの1つに、ビタミンDが考えられます。
今回新たにHumanReproductionよりビタミンDと妊娠率に関するメタ解析が紹介されています。
ビタミンDと妊娠率の関係性
イギリスのバーミンガムにおける研究で、ビタミンDに関わる11の研究に関するメタ解析です。
参加者は2700名おり、そのうちビタミンDが充足しているのは25.7%、その他は不足あるいは欠乏していました。
胎嚢確認による妊娠率を11の研究を対象として調べたところ、ビタミンDが充足している群の方が高かった(OR 1.46 [1.05-2.02])
出産率については、7件の研究において調査され、ビタミンDが充足している群の方が高かった(1.33 [1.08-1.65])
また、流産率については、ビタミンD過不足における影響は確認されなかった
という報告がされています。
そもそもビタミンDは、以下でも紹介しているように、紫外線を浴びる事で体内で合成されるという特徴を持ちます。
そのため、日照時間のより短い冬の季節においては、ビタミンD不足になりがちということも指摘されます。
この研究でも明らかになっているように、ビタミンDが慢性的に不足している方はおおよそ7-8割いらっしゃるという結果は、
当院で実施している検査から見ても、そう外れた数字ではありません。
もちろんビタミンDさえ足りていれば妊娠できるということではありませんが重要な役割を担っています。
妊娠後にも重要な役割を担うビタミンDが不足している方は、生活習慣の見直しやサプリメントによる補充などが必要かもしれません。