子宮筋腫は女性に特有の腫瘍で、女性の70%に発生するとされており、自覚症状があるレベルのものから、ないレベルのものまでありますが、
一般的に自覚症状があるレベルのものについては、摘出することで妊娠率の改善を図るものが多く、
自覚レベルの無いものについては、明確なコンセンサスが得られていません。
今回は、この無自覚の子宮筋腫に対しての摘出術が与える影響についてのASRMのガイドラインが出ていますので紹介します。
無自覚症状の子宮筋腫における摘出術の与える影響
子宮筋腫の発育する方向によって、
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漿膜下筋腫
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筋層内筋腫
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靭帯内筋腫
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粘膜下筋腫
のように分けられます。
筋腫の種類別に推奨度を分けて定義しています。
Grade A:行うよう強く奨める良い根拠がある
Grade B:行うよう奨める公正な根拠がある
Grade C:行うよう奨めるには根拠が充分ではない
粘膜下筋腫について
粘膜下筋腫の子宮鏡下核出術は妊娠率を改善するという公正な根拠がある。(Grade B)
粘膜下筋腫の子宮鏡下筋腫核出術が初期流産率を低下させると結論づける根拠はない。(Grade C)
漿膜下筋腫・筋層内筋腫
不妊治療の有無に関わらず、子宮筋腫が妊娠率を減少させると結論づける根拠はない。 (Grade C)
筋腫のサイズ、位置(粘膜下筋腫と内腔に影響する筋層内筋腫を除く)が妊娠率低下と初期流産の増加に関係すると結論づける根拠はない。(Grade C)
漿膜下筋腫の核出が妊娠率を改善させると結論づける根拠はない。(Grade C)
筋腫の核出術後の体外受精が妊娠率、生産率を改善しないという公正な根拠がある。(Grade B) ただし、筋腫の部位や大きさによる可能性がある。
筋腫核出術(腹腔鏡手術、開腹手術)が流産率を改善すると結論づける根拠はない。(Grade C)
というものです。
この論文では不明な点としては、
1・子宮筋腫が出産に与える影響
2・子宮内腔の変形の程度が子宮筋腫核出術の効果に与える影響
3・粘膜下筋腫を伴わない筋層内筋腫が不妊治療に及ぼす影響
4・ARTにおける筋腫核出術の恩恵
などが挙げられています。
子宮の内腔を変形させたりするような筋腫については、おそらく摘出することで妊娠率は改善するだろうとされていますが、
それ以外の筋腫に対してやみくもに適応すべきではないということが記されています。
しかし、○○下筋腫だからNGという通り一遍の解釈をするのは難しく、個々の状況に応じて決めるべきであると考えられます。