高輪院で漢方相談を担当いただいている住吉忍先生の関わられている研究が、
先日の第62回日本生殖医学会で発表されましたので、共有したいと思います。
(他の医療機関における研究です)
不妊治療の中でもART(生殖補助医療あるいは高度生殖医療)と呼ばれるものは、
多くの場合、外部から刺激を与え、卵胞を育て、受精をサポートしていきます。
ここで、刺激をしても反応が悪い方がしばしばみられます。
その場合、なかなか次の治療に進むことができないということも少なくありません。
当院でも、特にこうした方への漢方相談を推奨していますが、今回の研究もまたこうした方々を対象として、
解析されたものです。
漢方と受精卵・胚発育に関する研究
漢方の効果測定というのは、非常に難しく、実際の報告もなかなか少ないのが実情です。
西洋医学のように1つの薬でどうなったかという評価がしづらく、
たとえるなら、食事療法に近いものもあり、徐々に体調に合わせて摂取するものを変えていくというようなアプローチがあるため、
従来と同じ西洋医学的な考え方では評価ができないのです。
今回の発表は、そうした点でも非常に貴重な発表ではないかと思います。
今回の研究は以下のように行われました。
対象)不妊治療クリニックで2周期以上のART治療を受けて胚発育が不良であった61症例
※胚発育不良の定義は、良好胚初期胚(D3で8分割グレード2以上)、良好胚盤胞(3BB)以上がほとんど得られない症例としています
漢方相談の実施し、漢方を服薬した前後で、卵巣刺激法などは変更していません。
(使用前:使用後で記載します)
回収できた卵子の数 4.2個:5.3個
成熟卵の数 3.5個:5.0個
D3良好胚数 1.3個:2.2個
良好胚盤胞数 0.3個:0.9個
良好胚盤胞率 12.0%:23.3%
※良好胚盤胞率は、D3胚盤胞当たりの良好胚盤胞の比率で算出
少し難しく見えるかもしれませんが、ここで言えることとしては、
漢方を処方することによって、ARTにおける胚発育が顕著に改善しているということです。
また、実際の妊娠例としては、61例に対して、32例で妊娠成立していることとのことで、
効果の程が伺えます。
逆に、これだけの効果の可能性を秘めているものでもあるため、
きちんとしたエビデンスやスキルを持っている先生のところでうけることを推奨します。
今後の課題としては、症例数をより多く増やしていき、効果検証を重ねていくことだと思われます。
患者さんの妊娠という一つの目的に向かって、私たちのような西洋医学に加えて、中医学的な視点を取り入れることで、
一人でも多くの卒業をサポートできればと思います。
高輪院では、毎週水曜日に漢方相談を実施しています。
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