当院では、卵管鼠経部の狭窄や閉塞がみられる卵管性不妊の患者さまには
FT卵管鏡下卵管形成術を適応としています。
妊娠成績にも出していますが、低く見積もっても、FT適応となった方のその後の
自然妊娠での妊娠率はおおよそ20%と、いわゆる不妊ではないとされる方との水準と同程度になることが
結果として出ています。
数字的な意味でも非常に意味があるものだと思いますし、
不妊治療の中で原因が明確にわかりそれを除去して治療できるものというのは
想像以上に少ないものです。
授かりにくい要因がなくなった!と思っていただけることの心理的なメリットもあるのではないかと推測します。
またFTは保険適応にもなるため、費用的に体外受精などに踏み切りにくいという方にも
検討されるべき内容だと思います。
卵管形成術のシステマチックレビューとメタアナリシス
少し専門的な用語になりますが解説すると、
システマチックレビューとは文献をくまなく調査し、データの偏りを限りなく除き、分析を行うことを指します。
メタアナリシスとは複数の研究の結果を統合し、より高い見地から分析すること、またはそのための手法や統計解析のことです。
EBM(Evidence Based Medicine:根拠に基づく医療)を行う上で非常に重要視されるデータです。
今回の論文は、合計1720人を対象とした計27の研究を対象として、結果を統合して解析したものです。
片側または両側近位卵管閉塞(27例、1556例)では臨床妊娠率27%を示し
両側閉塞(14試験、617例)の女性では、臨床妊娠率は27%という結果ということで報告されています。
その後の累積臨床妊娠率は、
6ヶ月:22.3%
9ヶ月:25.8%
12ヶ月:26.4%
18ヶ月:26.0%
24ヶ月:27.9%
48ヶ月:28.5%
という結果で、妊娠される方の多くは術後半年以内に結果が出ていると考えられます。
出生率の(14研究、551例)は22%で、子宮外妊娠率(27例、1556例)は4%だったと報告されています。
子宮外妊娠については、通常の1-2%よりも高い確率が出ています。
当院でも実施しているFT(卵管鏡下卵管形成術)は、従来の手術などと比べても、
患者さんへの身体的な負担も少なく効果的な治療と考えられます。
卵管性不妊のすべての方というわけではありませんが、適応にあたる方はいつでもお声がけください。