以前、海外の論文の紹介で、
子宮内の最近環境と不妊の関係について解説しました。
この研究の時点では、諸外国におけるデータのみで、
日本やアジアにおける研究が待たれるという状況でした。
不妊とは少し離れますが、今回は早産との関係について、
同様に膣内の細菌叢環境が重要とされる結果が出ています。
膣内細菌叢環境を改善することで早産の予防につながる可能性
早産ハイリスク症例に対する腟内環境改善を目指したラクトフェリンによる早産予防の試み
として、昭和大学の大槻先生をはじめとした研究チームが発表した内容です。
ラクトフェリンは協力な抗菌作用があることで知られているほか、最近ではウィルスに対する効果、
免疫系に対する働きや脂質代謝改善効果があることがわかっています。
また、食品として認められていることから、きわめて副作用が少ないことでも知られています。
ラクトフェリンをマウスやラビットに投与して早産の予防がされることは発表されていましたが、
その研究成果をもとにヒトへ適応し、早産予防効果があるのかを検証したものです。
早産を繰り返し生児を得られなかった難治性細菌性腟炎患者など5名を対象とした研究で、
抗生物質を投与しても膣内環境が改善されなかった方に対してラクトフェリンを投与して、
環境改善があるのか、無事出産につながるのか、を検討したところ、
全ての症例において、ラクトフェリン投与開始4週間程度で、ラクトバチルスが発生したことが確認され、
すべて35週以降の出産となったと報告に至ったと報告されています。
今後更に症例数が増え、かつ不妊治療の領域であれば、反復して着床しないあるいは流産してしまうという
患者さんにおける同様の細菌叢との関係が明らかにされるのが望まれます。