不妊治療を行う中で、患者さんから
「すぐにでもできることはないですか?」
という質問が最もよく出ます。
そしてその都度、不妊だからと特別なことでなく、適度な食事、運動、睡眠と答えています。
今回、アメリカのハーバード大学の研究において、食品における残留農薬と不妊治療の成績の関連性が明らかになりました。
食品の持つ残留農薬と不妊治療の成績の関連性について
無農薬の野菜や果物、オーガニックな野菜などが様々に取り上げられますが、
多くの野菜や果物には少なからず農薬が含まれています。
もちろん、国のガイドラインによって、人体に影響を与えないであろうという基準は設けられていますが、
やはりゼロではなく、私たちの身体の中にも取り込まれていることは間違いありません。
今回のアメリカの研究では、
325名の患者さんを対象に事前に食物摂取頻度調査票(FFQ)を使用して直近1年間の食物の摂取頻度を調査し、
次にアメリカの農務省のデータベースを活用し、食品ごとの残留農薬をスコア化し、
残留農薬が高い果物や野菜と中程度から低いものとに分けて、それぞれの摂取量を4段階に分け、
その後の541症例を解析したというものです。
研究結果によると、残留農薬が高い果物や野菜の摂取量は、
妊娠率や生児獲得率に対して関係していることが明らかになりました。
最も摂取量が高かった(2.3サービング/ d)女性は、最も摂取量の少なかった女性と比較して
18%(95%CI、5%-30%)出生の確率は26%(95%CI、13%〜37%)低い結果となりました。
本研究は、世界的には残留農薬とヒトの妊娠成績の関連性について、結論付けた初めての論文とされており、
非常に注目を集めています。
ただし、調査票を元にした推測である点など、補足すべき点は多くあり、これからのさらなる研究が臨まれますし、
日本でも同様に国のデータを使用したレベルでの研究が求められます。
現時点ではすべての食品を無農薬のものに変えたりすることは非常に難しいことですが、
できる範囲で農薬の使用のない食品や果物をとり、運動をし、睡眠をとるという「健康的な暮らし」が
やはり不妊治療ではなおさら大切な基本となるのだと思います。