生化学的妊娠、あるいは化学流産ということについて解説いたします。
言葉の意味としては同義です。
多くの方に起こる可能性があるものであるため、正しく認識する必要があります。
生化学的妊娠・化学流産とは
生化学的妊娠、あるいは、化学流産とは
妊娠検査薬では判定が陽性であるものの胎嚢の確認ができないもの
とされており、かみ砕いて表現すると、
受精はしたけれど、妊娠成立はしなかった
ということになります。
化学流産という言葉の方が聞かれたことが多いかもしれませんが、
実際に日本産科婦人科学会の定義でも、化学流産は妊娠成立前のことであるため、
流産としてはカウントしないということとしています。
生化学的妊娠はなぜ起こるのか?
通常、妊娠は受精卵が子宮内膜に着床することから始まります。
着床後、絨毛と呼ばれる組織が作られていきますが、
この絨毛からhcgというホルモンが分泌されます。
妊娠していない女性の身体の中には、hcgはなく、
このホルモンを妊娠検査薬などで測定することで妊娠反応陽性ということになります。
この状態が生化学的妊娠という事です。
そしてその後、胎嚢(GS)が確認されれば、臨床的妊娠となります。
生化学的妊娠あるいは化学流産が起こってしまう理由というのは、
主に受精卵の染色体異常だと考えられています。
これは健康な女性や若い女性であったとしても、誰にでも一定の確率で起こり得るものです。
染色体異常の受精卵の多くは着床せず、妊娠することはほとんどないと考えられています。
そのため、流産という定義に含めない、妊娠に含まない、という風に考えられています。
生化学的妊娠における注意点
あくまでも生化学的妊娠は妊娠に含まないと考えると、
注意すべき点がいくつかあります。
①心のケア
生化学的妊娠や化学流産は誰にでも起こり得る事であることを理解し、
胎嚢の確認を以て妊娠ということでご理解いただきたいですが、
一方で、落ち込まれる方も非常に多くいらっしゃいます。
体外受精以上の治療の場合、移植するということは、その後陽性か陰性の分岐点があることは間違いないため、
当院では生殖心理カウンセラーによる移植後サポート(無料)も行っております。
一般不妊で悩まれている方は、あまり早いタイミングでご自身で妊娠検査薬を利用することは控えたほうがよいと思います。
通常であれば、少し重たい生理が来たなという感じで受け止められることとを「流産」として受け止めてしまう可能性があるからです。
生化学的妊娠には症状もほとんどなく、後遺症もありませんから、次の治療に入っていただいて構わないと思います。
②子宮外妊娠のリスク
あまり長期間にわたって妊娠反応が出ているという状態の場合では、子宮外妊娠の可能性もあるため、
その際には医療機関での検査を受診されることをお勧めします。
③妊娠率などの考え方
これは、クリニックなどを探す際のマメ知識ですが、
医療機関によっては、妊娠成績の算出方法として、生化学的妊娠を用いる場合があります。
その際には、既述の通り、全てが胎嚢確認できるわけではないので、
「生化学的妊娠での妊娠率>胎嚢確認での妊娠率」
となることに注意が必要です。