不妊治療と子宮外妊娠
ここでは、子宮外妊娠の治療方法等ではなく、不妊治療と関連して語られる子宮外妊娠について解説します。
不妊治療を行うことで、子宮外妊娠が増えるということが一部ではいわれますが、
確かにそういった側面があり、世界的にもレポートされています。
Ectopic pregnancy after in vitro fertilization: differences between fresh and frozen-thawed cycles.
Fertil Steril, 104, 110-118.
この論文は、アメリカ生殖医学会の下部組織で、SARTというアメリカ全土で行われる体外受精関連の治療成績をまとめて報告する組織から出ているため、
サンプル数も非常に多く、信頼できるデータではないかと思われます。
結論としては、
凍結融解胚移植は新鮮胚移植に比べ「1/3」と低くなる
というものです。
具体的に、対象としては2008年から2011年のデータで、100,000以上の周期のデータを用いて、
71,906周期は新鮮胚移植による妊娠で、31,164周期は凍結融解胚移植による妊娠でした。
全妊娠中1.38%が、いわゆる異所性妊娠だったとされており、
新鮮胚移植と融解胚移植で比較すると、融解胚移植では、約65%異所性妊娠の発生率が低くなっています。
なぜ新鮮胚移植の方が異所性妊娠率が高く、凍結融解胚移植では低いのか?
最大の違いは「卵巣刺激」をしているかどうかで、融解胚移植では卵巣刺激を行わないため、
ホルモン的には生理的な状態に近いことです。
新鮮胚移植も凍結融解胚移植も、採卵時には多くの場合、卵巣刺激を行い、複数の卵胞を育てようとします。
通常は月一つの排卵を複数個育てるとなれば、当然ホルモン値等にも一定の影響が出ますし、
その結果として子宮内膜のコンディションにも差が出るといわれます。
以前から胚盤胞を移植した場合には、新鮮周期よりも融解胚移植で妊娠率が高いことは知られています。
卵巣刺激をすることで子宮内膜の環境が変化し、着床が起きづらくなることが原因と考えられていましたが、
同様な理由で、子宮内膜で着床せずに、卵管などの本来着床すべきではない場所に妊娠してしまうということのようです。
そのため、最近ではもっぱら凍結融解胚移植を主に行う医療機関が増えています。
子宮外妊娠はたったの1%の発生率とはいえ、発生し放っておけば命にかかわる可能性さえあります。
医師と相談をしながら、治療方針を決めていくことが推奨されます。