不妊治療、特に体外受精以上の高度生殖医療が注目を浴び、
「万能薬」
のように考えられますが、もちろん欠点や副作用があることを正しく理解する必要があります。
多胎妊娠のリスクが高い
多胎妊娠というと聞きなれないですが、いわゆる双子ちゃんや三つ子ちゃんのことを指します。
このリスクが通常よりも高いとされますが、正確に表現すると、「以前は」という但し書きが付きます。
実際に不妊治療による多胎妊娠例というのは数多く存在し、
一般の比率が1-2%といわれるのに対して、現在ではおそらく4-6%程度というところでしょう。
以前は二ケタをゆうに超える水準であったことも事実です。
双子ちゃんがかわいいということはよく挙げられ、それについては一切否定もしませんが、
医学的には1人の場合より妊娠高血圧症候群や早産などのリスクが高く、
低出生体重児になることも多いので、出産の際には、NICUという赤ちゃんの集中治療施設などがある病院や
そうした赤ちゃんのケアをできる施設を選ぶことも重要です。
加えて、経済的な面での出費、子育ての負担があることもやはり忘れてはいけません。
なぜ多胎妊娠につながりやすいのか
現在の多胎妊娠の多くは、日本においては、排卵誘発療法によるものだといわれています。
排卵障害にある方に対して、クロミフェンやHMGなどの注射を用いて治療を行うことで、
排卵を誘発したものの、複数の排卵につながり双子となるケースです。
これはタイミング療法あるいは人工授精を対象にした方に起こりえます。
実は、体外受精の多胎というのは、現在は起こりにくくなっています。
なぜ体外受精の多胎妊娠は少ないのか
そもそもどうすれば双子ができるのでしょうか。
簡単に言えば、二つの受精卵を子宮内に移植すれば、その可能性は高まります。
2008年以前は、胚移植を行う際に、二つ以上の胚を戻すということも行われていました。
体外受精などにかかる医療費は非常に高く、短期で結果(妊娠)ということにつなげる必要があり、
諸外国などでもまだまだ高い多胎率のところも多くあります。
しかし、妊娠数の確認はできるものの、その後の産科や小児科への負担、
もちろん患者さまへの身体的、精神的、経済的な負担が重なり、
日本産婦人科学会は
「胚移植は原則として一つ戻す」
というガイドラインを発表したのです。
それ以降、日本においては多胎率は大幅に減少し、同時に移植せずに余剰となる胚が多数発生したこともあり、
凍結技術が発達し、凍結融解胚移植が急激に増えていくことになったのです。
実際に隣国である韓国が先日発表したものによると、数年前の韓国の対外受精における多胎率は40%を超えているというものもありました。
2010年の諸外国のデータでは、
アメリカ:31.0%
ドイツ:20.9%
イタリア:23.5%
イギリス:22.8%
ともいわれていますから、日本の各施設は厳格に単一胚盤胞移植のルールを遵守しているといえるかもしれません。
また、一つしか戻さないからと言って、絶対に双子ができないということではありません。
欧米では、二つ卵を戻して四つ子が生まれたという例もありました。
リスクを正しく把握し、パートナーとも相談しながら治療計画を立てられるとよいですね。