おおよそ4000人に1人というような割合で、
抗セントロメア抗体陽性
という方がおり、不妊とも緊密に関係しています。
具体的には、通常2PNという状態で、精子由来・卵子由来それぞれの前核が1つずつ、合計2つ見られる状態が正常受精となりますが、
3PN、4PNと多核受精をしてしまう状態になられる方に、抗セントロメア抗体陽性の方が多くいらっしゃいます。
抗セントロメア抗体とは
まず、セントロメアとはなんなのか、ですが、
染色体の長腕と短腕が交わる部位(センター)をさします。
役割としては、細胞分裂の際に紡錘体と結合する働きをします。
紡錘体は卵子細胞質の中に存在し、分割時に遺伝情報である染色体を均等に分配する重要な役目を持ちます。
そして、抗セントロメア抗体ですが、抗セントロメア抗体はセントロメアと結合するため、
そのため紡錘体がセントロメアと結合できなくなります。
その結果として、正しく分割がなされなくなるのではないかと考えられています。
不妊ということでは、
-
卵子の成熟率
-
正常受精率
-
分割率や胚盤胞到達率
が低くなることで知られています。
通常多核になる場合の多くは多精子受精と考えられていますが、
その理屈で考えると、顕微受精は精子一つを卵子に注入し受精させるので、
多精子受精は起こりえないという考えになります。
実際にある研究では、セントロメア抗体陽性患者の卵子や受精卵を調べると、
卵子の中に通常1つであるはずの雌性前核が2個以上あることが確認されているため、
精子ではなく、卵子側の原因であると考えられています。
抗セントロメア抗体に対しての治療法
抗セントロメア抗体陽性は、強皮症のうちでも軽症型であるCREST症候群に特異的な抗体として発見されているほか、
Raynaud症候群、原発性胆汁性肝硬変、ルポイド肝炎の方にも認められますが、こうした状態の方の治療においては、
原疾患の治療が行われ、抗セントロメア抗体に対しての治療を行うということはあまりないようです。
不妊治療においては、抗セントロメア抗体の治療で確立されているものはまだないというのが実情かもしれません。
これまでの例でいえば、プレドニンなどのステロイドを使用したり、
着床期においては低用量のアスピリンを使用したりすることも考えられていますし、免疫グロブリンなどの実施も検討されています。