抗リン脂質抗体とは自己免疫疾患の一種です。
自己免疫疾患とは、本来異物に対して免疫が働くわけですが、
自分自身の正常な細胞や組織に対してまでも異常と判断して攻撃してしまうという症状です。
抗リン脂質抗体ができることで、全身の血液が固まりやすくなることで知られています。
血液が固まりやすくなることで、血栓ができやすくなります。
そのため、血栓を原因として、脳梗塞や心筋梗塞の症状に発展することもあり、
不妊については、習慣性流産、胎盤内血流不全、子宮内胎児死亡などいわゆる不育症との関係性が示唆されています。
抗リン脂質抗体と不妊・不育
不育症の患者さんのうち、大よそ17%の方に抗リン脂質抗体が認められるとも言われており、
その場合の流産率は推定で80%近いということも言われています。
他の流産要因と比べて、妊娠中期から後期にかけての流産が多いという特徴があります。
抗リン脂質抗体症候群が疑われる場合には血栓症や妊娠合併症、習慣性流産などの症状があります。
具体的には、
・血栓症
・妊娠10週以降の胎児奇形のない子宮内胎児死亡
・妊娠高血圧もしくは胎盤機能不全による妊娠34週以前の早産
・3回以上つづけての妊娠10週以前の流産
がみられる場合には、検査を行うべきでしょう。
検査自体は血液検査で行うことができますので、詳しくはお尋ねいただければと思います。
また、研究途上ではありますが、「血栓を引き起こすが流産はしない方」と「血栓はないが流産する方」では
同じ抗リン脂質抗体であっても、異なる病状を示すものであるという報告もされています。
抗リン脂質抗体の治療方法
抗リン脂質抗体の治療方法としては、
現在のスタンダードな治療法としては、
血栓を作りにくくするための低用量アスピリン療法にヘパリンを併用することで
生児獲得率70-80%となることがわかっています。
また、一時期治療できたとしても、再発するリスクが高いことも知られていて、
おおよそ50%の確率で血栓症が再発するともいわれています。
そのため、二次予防もまた重要であり、長期的に経過を見ていかなければなりません。
まだ研究途上の領域でもあるため、これからも注目していく必要があります。