妊娠と免疫は非常に密接な関係であるといわれています。
本来、自身の細胞ではない(だけではない)受精卵が拒絶されることなく、
着床していく点にも免疫学的に考えても、ある意味奇妙な現象とも形容されます。
今回は、免疫系の司令塔的な役割を果たしているヘルパーT細胞と妊娠の関係について解説したいと思います。
ヘルパーT細胞(Th1/Th2)とは
ヘルパーT細胞には、Th1とTh2があります。
①Th1
Th1の働きは、細胞やウィルスなどの「異物」に対して反応します。
異物を除外するために、抗体を作るように指示を出し、異物を排除していきます。
またこの時、一度作った抗体は記憶しているので、同じ異物が二度と侵入してこないように抗体を保持します。
これを抗原抗体反応と言います。
Th1が指令を出す際に産生されるサイトカインが、インターフェロンガンマ(IFN-γ)と呼ばれるものです。
②Th2
Th2の働きは、アレルゲンに反応するといわれています。
Th2が指令を出す際に産生されるサイトカインが、インターロイキン4(IL-4)と呼ばれるものです。
これらのTh1・Th2はどちらかの働きが過剰にならないように、IFN-γとIL-4のサイトカインがお互いの働きを抑制しあうように働き、
免疫のバランスを保っていると考えられています。
妊娠とTh1/Th2のバランスについて
正常な妊娠は、Th2優位の現象といわれています。
つまり、Th1とTh2の比率を考えたときに、Th1寄りの状況であると、
着床あるいは妊娠継続しにくい可能性があることが指摘されています。
最近の論文でも発表されています。
Nakagawa_et_al-2017-American¥Jounal_of_Reproductive_Immunology
要約すると、この研究では、
反復着床不全あるいは流産の患者で、Th1/Th2≧10.3以上の患者を対象とし、
Th1を、Low,Middle,Highの3群に分けて、(Th1<22.8をlow、22.8≦Th1<28.8をmiddle、28.8≦Th1をhigh)
妊娠率、流産率、妊娠継続率などの指標で比較
しているものです。
結果としては、
妊娠率に有意差はないものの
流産率においては、Highグループにおいて有意に高く
妊娠継続率、生産率ではHighグループにおいて有意に低下
しているという結果が得られています。
この論文では、Taclolimus(タクロリムス)という免疫抑制剤を使用することで、
Th1/Th2のバランス改善を試みています。
治療方法自体はこれからさらなる検証と研究が必要ですが、
このTh1/Th2比が妊娠継続に対して、影響を与えていることには大いに注目するべきことだと思います。
当院でも検査可能です。
気になる方はスタッフまでお申し付けください。
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