妊孕性温存について考える

院内勉強会 がん患者の心理と現実について

先日高輪院で開催されたスタッフ向けの勉強会の様子です。

 

今回は、当院の生殖心理カウンセラーであり、日本では数少ない

「がん・生殖医療専門心理士」の菅谷による勉強会でした。

 

私達は妊孕性温存をライフワークとして取り組んでいますが、

患者さんが実際にどのような心理状況にあるのか、現実的に知ることはとても大切です。

 

がん患者の心理状態


がん患者の心理状態を時間軸に応じて解説してくれました。

第一相から第三相まであり、時期に応じて状況が変化します。

もちろん、一人一人、受け取り方は様々ですが、電話を受けるスタッフや検査で対応するスタッフ、

看護師、医師など全員が理解した上で、寄り添った対応が必要ですね。

 

また、私たちのもとに来られる患者さまは、ご夫婦で治療に来られる方が多くいらっしゃいます。

がんにかかられた奥様と同じように、ご主人の心理状態も大切な要素です

 

一般的には、ケアされるのは男性、ケアするのは女性という暗黙の了解のようなものがあるのか、

やはりパートナーの男性の落ち込みも著しいものがあります。

 

現実は美談だけではない



まず現実問題として、直面すべき課題で治療費のことが出てきます。

がんになることによって、多くの場合就労環境にも変化があり、

それは収入にそのまま影響することになります。

そうした環境の中で、治療費という支出がかかってくるという現状は、

現実的にはとても苦しいものです。

まして、生殖補助医療の費用は現時点では保険がきかず、高額になることも少なくありません。

 

そのような現実的な問題は、私たちが解決できるものだけではありません。

しかし、そうした患者さまが立たされる環境を理解し、情報を整理し、気持ちを整える。

 

それが、がん・生殖医療専門心理士にできることだと思いますし、

そうした専門家がいる施設だからこそ、他のスタッフにも共有し、

できる限り多くのスタッフが寄り添った対応ができるように学習を重ねていきます。

 

妊活ノート編集部

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妊活ノート編集部です。医療現場での当たり前を、より分かりやすい情報としてお届けします。正しい知識を得ることで、一日でも早い治療卒業のサポートをしたいと考えています。

菅谷典恵

菅谷典恵

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臨床心理士、生殖心理カウンセラー、がん・生殖医療専門心理士
京野アートクリニック(仙台、高輪)にて生殖心理カウンセリングを担当。
治療のことはもちろん、仕事と治療の両立、ご夫婦の考えの温度差、あらゆる人間関係など、どのようなご相談でもお受けしています。
治療もプライベートも快適に過ごすためのサポートとなるようなカウンセリングを目指しています。

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