体外受精などの治療をどのような計画で進めるか、
いつまで続けるか、というのはとてもよくきかれるもので、
それでいて繊細でとても難しい問題です。
治療計画という観点で考えてみたいと思います。
医学的に考える治療計画
よく言われることで不妊治療には、終わりがないといわれます。
先の見えない不安がどんどん大きくなっていき、不安につながることも少なくありません。
1つの考え方として限界設定というものがあります。
詳細は、心理的な面からカウンセラーから別途紹介しますが、
ここでは、どこまで治療を続けるかということをお二人の間でなんとなくイメージしておくこと
だと考えてください。
医学の領域ではEBM(Evidence Based Medicine)という考え方があり、
「良心的に、明確に、分別を持って、最新最良の医学知見を用いる」
という考え方です。
限界設定とEBMという二つの考え方から一つのアイディアとして、
治療計画を紹介したいと思います。
累積出産率という考え方
Fertil SterilにStewartらが紹介している論文で
How effective is IVF?というものがあります。
ここに累積出産率というものが示されています。
詳細のグラフなどをここで紹介することは難しいのですが、
できる限り分かり易く紹介したいと思います。
胚盤胞移植を繰り返していけば本来累積出産率は高まっていきます。
自然妊娠も1回あたりの妊娠率は2-30%と言われますが、一定回数の性交渉を持っているカップルの8-90%が1年以内に妊娠するという考え方と同じものです。
さて、その累積出産率を見ていくと、やはり年齢との関係性があることがわかります。
40歳を超えると30代の半分ほどのスコアになり、出産率の上昇がなくなる
胚移植回数が10回を超えると出産率の上昇が見えなくなります。
一方で39歳未満は、20回ほどまで出産率は高まりますが、そこからはほぼ変化が見られなくなります。
ここで治療効率が止まるということです。
そのため、一つの考え方として
40歳未満では、累積移植胚数20個まで
40歳以上では、累積移植胚数10個まで
というように考えることができます。
ここで忘れてはいけないのは、胚盤胞を一つ育てるのには複数の卵子が必要であることです。
以下でも紹介していますが、卵子が採れてから胚盤胞まで育つのが25%程度と考えられていますので、
概ね4個に1個ということになります。
10個の胚盤胞には40個の卵子が、20個の胚盤胞には80個の卵子が理論上必要になります。
年齢については、採卵した時の年齢で考えます。
可能性が0にならない
やめどきや始め方を自身で決めなければいけないのはこの可能性が0にならないということです。
ニュース等でも高齢での出産成功の例が報じられ、よくも悪くも常に希望を抱ける環境にあります。
医学的な簡単からやめどきを断定することは難しいのが実際のところです。
必要な情報を持ったうえで、ご夫婦としてどのような治療としていくのかを考えていくことが大切ですね。