良好胚盤胞を移植しても、反復して着床に至らないことがあります。
反復着床不全
というように言われます。
現在、凍結融解胚移植を行った際の妊娠率は、日本ではおおむね40%から50%程度といわれます。
海外では、高いところで70%などともいわれます。
これは、胚移植をしても妊娠が成立しない場合の原因が大きく二つあるとされていて、
1つは受精卵側の問題、1つは子宮側の問題といわれています。
そのうち、受精卵側の染色体異常の検査については、
海外では一般的であるため、上述のように妊娠率に差が出ていると思われています。
受精卵の染色体異常のスクリーニング検査については、日本では現在パイロットスタディが開始されているところであるため、
承認まではまだ少し時間がかかるとされています。
そのため注目されているのが、子宮側の問題についてのアプローチです。
当院では子宮内膜受容能力検査(ERA)を実施していますが、それだけでなく、
慢性子宮内膜炎の影響や子宮内の細菌叢(さいきんそう)環境による妊娠率の差などに注目しています。
今回は慢性子宮内膜炎について紹介したいと思います。
子宮内膜炎とは
似た名前に子宮内膜症がありますが、子宮内膜炎とは全く異なります。
子宮内膜症については以下から確認ください。
子宮内膜炎には急性と慢性があり、不妊症にとって問題になるのは慢性です。
急性子宮内膜炎は子宮内膜の機能層という月経ではがれる箇所に感染が発生ますが、
月経時に機能層が剥がれ落ちる事で、同時に治癒することも少なくありません。
慢性子宮内膜炎は、機能層よりも内側に位置する基底層まで感染が波及している状態で、
月経時には基底層まで剥がれ落ちないために、感染が慢性化してしまうというものです。
症状としては、下腹部痛などの症状がありますが、慢性子宮内膜炎の場合の方が自覚症状が少ないともいわれています。
子宮内膜炎と着床不全の関係性
慢性子宮内膜炎が発生している場合、着床不全となる可能性が示唆されています。
実際に、Hyun Jong Parkらがこれまで報告している内容では、
慢性子宮内膜炎が認められた患者に治療を施し、治療が完了した群と子宮内膜炎が治癒せず存続した群に分け、研究したところによれば、
妊娠率(65.2% vs. 33.0%)も出産率(60.8% vs. 13.3%)という結果が得られたということです。
日本でも、先日鳥取にて開催された日本受精着床学会などでも発表があり、大いに注目されています。
子宮内膜炎は子宮鏡検査などだけでは、見つからない場合も多く、
現在では、CD138という形質細胞マーカーでの検査によるものが有力視されています。
当院でも実施しています。
反復着床不全が疑われるという方は、ぜひお声がけください。
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