凍結融解胚移植とは、
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採卵し受精させ、胚盤胞まで発育した受精卵を凍結する
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子宮内膜のコンディションに合わせて別周期で移植する
ことによって妊娠する確率を高める方法です。
凍結融解胚移植はFET(Frozen Embryo Transfer)と表現されますが、この技術の確立とともに
日本の高度生殖医療は目覚ましい発展を遂げてきました。
実際に、日本産婦人科学会のデータでは、グリーンのグラフがFETなのですが、
2008年を境に急激に伸長していることがうかがえます。
凍結とは?胚盤胞とは?子宮内膜とは?
凍結融解胚移植を理解するうえでは三つのポイントがあります。
凍結技術
一般には、緩慢凍結法とガラス化凍結法という二つの手段があり、日本ではもっぱらガラス化凍結法がとられます。
簡単に表現すると、液体窒素を活用しおおよそ1分で-196℃にて凍結させる方法ですが、
この胚盤胞の凍結技術自体は確立されたもので安全性も確認できているため、必要以上に理解を深めることは必要ないかもしれません。
通常、採卵を行うと自然周期でない限りは複数の卵子が得られ、受精卵ができます。
しかし、移植の際には原則として一つしか戻すことができません。
そのため、このとき発育した受精卵を凍結保存しておくことが求められるようになったのです。
参照:体外受精のリスク①多胎妊娠
胚盤胞
受精卵は、受精したのちに分割して成長していきます。
胚盤胞(5-6日)
胚盤胞まで育たない胚というのもあるわけです。
そのため、胚盤胞まで正しく成熟した胚を移植するということは、初期胚を移植するよりもより妊娠する確率が高まるといえます
子宮内膜
体外受精や顕微授精を行い、これまでは「受精」が一つのゴールのように感じられるかもしれませんが、
妊娠が成立するには着床が必要で、着床する場所は子宮内膜です。
この子宮内膜のコンディションは着床率に大きな影響を与えます。
卵巣刺激によって卵巣が腫れていたり、重度の場合には卵巣過剰刺激症候群(OHSS)を発症していることもありますし、
子宮内膜が薄くなっていることも少なくありません。
そのため、胚を凍結して、子宮内膜がベストな状況に合わせて移植を行うことが求められるのです。
凍結融解胚移植のデメリット
凍結融解胚移植のデメリットもあります。
凍結することによって、胚に5%程度のダメージがあるとされているため、
凍結をすることによってすべての胚が移植可能とは限らないということです。
加えて、凍結した後に子宮内膜のコンディションと合わせて移植を行うため、
移植まで1-2か月の期間を要することもデメリットとして挙げられます。
総じて、こうしたデメリットと比べて
凍結しておくことで最も負担がかかる採卵回数を少なくできる
子宮内膜のコンディションを見極め、着床率を高められる
というようなメリットの方が大きいと判断され、凍結融解胚移植は多くの医療機関で実施されています。