患者様から多くのリクエストをいただき、現在当院の妊娠成績をまとめており、
近日公開させていただきます。
妊娠率を確認する際には、実に様々な注意点が必要となるため、
数字だけが注目されて独り歩きすることが無いように、
ポイントを押さえていただくとよいと思います。
過去のエントリーは以下から確認ください。
①治療件数を確認する
日本は不妊治療のクリニック数が600程あり、世界で最も多いといわれています。
しかし、日本の治療件数のうちの80%は実際には上位約20%の施設で実施されています。
2013年の報告では、年間治療件数が300件以下(1日1件程度の治療)の施設数が296施設あるといわれています。
ARTの治療の成功には技術的な習熟が欠かせません。
その習熟のためには、治療件数が一定必要になります。
また、治療件数が少ない状態での妊娠率は、1件の増減だけで、大きく妊娠率が変わってしまうことも少なくありません。
確率だけでなく、治療件数も確認するとよいでしょう。
②年齢を知る
治療成績に影響を与えるのは、技術力だけではありません。
患者さまの年齢も不妊治療にとっては、重要な要素です。
妊娠率の内訳を確認するようにしましょう。
特に35歳や40歳を区切りに妊娠率は大きく変わるので注意が必要です。
③分母と分子を確認する
施設によって、採用している分母と分子は違うことがあります。
大きく分けて
採卵→移植→化学的妊娠→胎嚢確認→出産
というステップがあります。
当院の場合、移植に対しての胎嚢確認での妊娠率を発表していますが、
当然、化学的妊娠を分子とすれば、妊娠率は高くなりますし、出産を分子とすれば低くなります。
また、採卵から移植の間に起こることも正しく理解しておきましょう。
仮に100個採卵できたとして、成熟するか、受精するか、胚盤胞まで育つのか、
というステップを経ていくと、胚盤胞の地点では25個程度になります。
ここで「75」個が脱落してしまっているということは忘れてはいけませんね。
採卵あたりの妊娠率というのも大切な指標です。
妊娠率は高すぎても、低すぎても、何か理由があるケースがあります。
まずは正しい知識を持ち、妊娠率について偏りのない理解をしていただけたらと思います。
そして、もちろん、確率だけがすべてではありません。
不妊治療は通常の風邪などとは異なり、比較的長期の治療となります。
スタッフやクリニックの雰囲気や立地様々な視点で、ご自身に合うかを検討してみてくださいね。