子宮内膜症というものについては以前に解説いたしました。
今回は子宮内膜症を原因とした不妊を予防する方法について解説したいと思います。
子宮内膜症による不妊の予防について
子宮内膜症は、エストロゲンと月経血の骨盤内逆流により、
促進されていきますから、それを防ぐことを考えていきます。
主に薬剤の服用によって抑えようというものです。
①子宮内圧の過剰な上昇を防ぎ、月経血の骨盤内逆流を防ぐ
妊娠していない子宮は、規則的に収縮を繰り返しています。
子宮内膜の増殖期には10分間に10-30回収縮しており、
月経時にはその収縮時の子宮内圧が5倍になるといわれています。
そして月経困難症がある場合には、8倍以上になるともいわれています。
この子宮収縮が子宮筋への血流量を低下させ、痛みを引き起こす原因にもなりますし、
骨盤内への月経血の逆流へとつながっていくと考えられています。
また、子宮内膜組織は高いプロスタグランジン産生能があります。
このプロスタグランジンは子宮の収縮と緊密な関係にあり、
子宮内膜が増殖すればするほど、プロスタグランジンは増加し、
それによって、子宮の収縮は強まり、月経痛に繋がっていきます。
そのため、子宮内圧の過剰な上昇を防ぐための薬剤の投与が有効と考えられています。
②エストロゲンを抑える
有効な手段として考えられるのが低用量ピルの服用です。
低用量ピルの服用で、内因性のエストロゲンを抑えることによって、子宮内膜の過剰な増殖を抑えます。
前にも書きましたように、子宮内膜の増殖と共にプロスタグランジンが増加するところ、
子宮内膜の増加を抑えているわけなので、プロスタグランジンの産生も抑えられることになります。
そうすれば、子宮の収縮が抑えられ、子宮内圧が上がることも抑えられます。
つまり、これによって月経血の逆流も防ぐことになります。
ライフスタイルの見直しも大切
子宮内膜症はライフスタイルと深いかかわりがあることが指摘されています。
実際に、月経周期が短い、あるいは長い場合に、より発症しやすくなるといわれていますし、
長年にわたるタンポンの利用が子宮内膜症の増加につながるなどの報告もなされています。
子宮内膜症の発生に深くかかわるのは、エストロゲンですが、そのエストロゲンレベルを上げるといわれている
カフェインの過剰な摂取なども控えるべきといわれています。
偏食や運動不足によって、脂肪細胞から分泌される「アディポネクチン」といわれるホルモンがが低下しますが、
それによって子宮内膜症のリスクが高まることも指摘されています。
注目されるアディポネクチンとは…
アディポネクチンは一般に痩せホルモンなどともいわれ、注目されておりますが、
医療の世界では動脈硬化を予防し改善する働きが期待されています。
このアディポネクチンが子宮内膜症に対しても関連があることが東京大の発表で明らかになっています。
具体的には、77人の健康な女性の子宮内膜の調査から、
子宮内膜には常時アディポネクチンが働くのに必要な受容体が2種類存在していることが判明し、
その受容体は特に着床期になると増加する傾向にあることが明らかになりました。
子宮内膜の細胞にアディポネクチンを加えると、炎症のもとになる細胞の産生が抑えられることも確認されました。
一方で子宮内膜症の方の血液を調べると、アディポネクチン濃度が、一般の方と比べて2割低下しているという結果になりました。
つまり、十分なアディポネクチンの分泌を保つことが子宮内膜にとってポジティブに働くということで、
食生活の改善や適度な運動が有効だと考えられます。
子宮内膜症は、生殖年齢にある女性に多く見られ、潜在的なものも含めると、より多くの方にリスクがあります。
日々の健康的な暮らしが、そもそもの子宮内膜症の罹患に対しての予防にもつながります。