最近、不妊治療の中でよく耳にするようになった
レトロゾールをはじめとしたアロマターゼ阻害薬。
実は、もともとは閉経後の乳がん治療に用いられてきた薬です。
お薬の名前としては、フェマーラ(ノバルティスファーマ社の製品名)の方が多いかもしれませんが、
同じ意味です。
レトロゾール(フェマーラ)の働き
レトロゾールなどのアロマターゼ阻害薬の本来の働きを理解するには、
まずアロマターゼについての理解が必要です。
アロマターゼとは、
男性ホルモンから女性ホルモンに変換するための酵素
といわれています。
具体的には、
アンドロゲンをエストロゲン(エストラジオール E2)に変換する
わけですが、その働きを阻害するのが、アロマターゼ阻害薬ということになります。
女性ホルモンに依存するタイプの腫瘍では、エストロゲンの増加に呼応してがん細胞が増加するため、
その増加を抑える事につながります。
つまりアロマターゼ阻害薬の働きは
エストロゲンの分泌を抑制する
ことと言えます。
なぜ不妊治療に用いられるのか?
では、なぜ不妊治療に用いられるのか。
そのためには、再度ホルモンのかかわりについても理解したほうが良いかもしれません。
ここでは、簡略に記載しますが、
卵胞はFSH(卵胞刺激ホルモン)によって発育していきます。
その後、卵胞が育ってくるとエストロゲンが増加していきます。
アロマターゼ阻害薬の働きによってエストロゲンの増加を抑えるために、
卵胞が育っていないのではないか?と錯覚し、
その結果、FSHの分泌を一時的に増加させます。
それにより、卵胞発育を促すことが期待されると考えられています。
例えば、PCOS(多嚢胞性卵巣症候群)の方の場合に用いられることもあります。
PCOSの方は、FSHが低値であることが多いといわれています。
アロマターゼ阻害薬を用いる事で、FSHの分泌を促進して、卵胞を育てることが期待されるケースがあります。
内服薬による排卵誘発はこれまではクロミッドなどが主流ですし、
今でもメインではないかと思います。
しかし、患者さまによっては、卵胞が育たなかったり、
副作用として報告されている内膜の希薄化が進んでしまい、妊娠に至らないということも考えられます。
もちろん、レトロゾールなどのアロマターゼ阻害薬にもデメリットはあります。
本来はがん治療に使用される薬であるため、医師による診察と同意のもとで使用されることが肝心ですし、
保険が適用されないため、費用的にも自費となるので高くなる傾向があります。