不妊原因の約半数に男性がかかわっているということは徐々に知られ、
不妊症は女性だけのものというとらえられ方も少しずつ変わってきているかと思います。
男性不妊症患者の15%、女性不妊症の約10%が染色体異常などを含めた
遺伝に関わる内容で不妊治療の施設を訪れているといわれています。
当院にも遺伝カウンセラーがおりますが、遺伝学の基礎的な内容の理解は、
不妊症を語るうえで、今後なくてはならないものになっていくのは間違いありません。
男性不妊と遺伝子異常
男性不妊症のの方の約5%に、染色体異常がみられるとされていますが、
常染色体異常、性染色体異常とに分かれています。
性染色体異常
①クラインフェルター症候群
クラインフェルター症候群とは、男性不妊の方における染色体異常で最も多いもので、
染色体の構成が47,XXYを代表とする、2個以上のX染色体と1個以上のY染色体が認められる症候群です。
主な症状としては、
- 精巣の委縮
- 女性化乳房
- 無精子症
とされ、実際に非閉塞性無精子症のおおよそ10%がクラインフェルター症候群を原因としています。
以前は絶対不妊症といわれてきたクラインフェルター症候群ですが、顕微鏡下での精巣内精子回収法(マイクロテセ:MD-TESE)によって、
実際に当院の成績でも40%以上の方が精子を発見することが出来ています。
②46,XX男性
性分化異常症の1つといわれます。
そもそも、ヒトの染色体は、常染色体22組44本と性染色体2本(男性はY染色体1本、X染色体1本のXY。女性はX染色体2本のXX)
合計46本の染色体で構成されます。
表記の仕方としては、男性は46,XY、女性は46,XXとなります
本来はY染色体上にあるSRY遺伝子というものが、X染色体上に移動したことが原因で、発生するものと考えられています。
この症状に対しては、いまだ有効な不妊治療はなく、絶対的な不妊症として捉えられています。
③47,XYY
Y染色体が1本余分にある染色体異常で、クラインフェルター症候群と同様に
おおよそ男性1000人に1人の発生頻度と言われます。
④Y染色体構造異常
Y染色体の長腕には、精子の形成にかかわる遺伝子があります。
その遺伝子が欠失すると無精子症や乏精子症になってしまいます。
また、精子形成に関する遺伝子が欠失していなくても、減数分裂していく過程で相同染色体の対合が障害されるなどして、
造成機能障害を起こしていると考えられる例もあります。
このように、遺伝と生殖は非常に密接にかかわっています。
遺伝的なことで不安がある場合には、ぜひ遺伝カウンセラーにお声がけください。
常染色体については、また別の機会に記載したいと思います。