妊孕性温存について考える

子宮内膜症及び子宮内膜症性卵巣嚢胞と妊孕性について

不妊症患者の25-50%に子宮内膜症があるといわれ、

子宮内膜症患者の30-50%が不妊症であるという報告がなされるほど、

子宮内膜症と不妊の関係性は深いといわれます。

しかし、子宮内膜症は「悪性疾患」ではありません。

それでも、子宮内膜症と妊孕性については深い関係があるとされています。

 

子宮内膜症と妊孕性の関係性


様々な点から子宮内膜症は妊孕性と深い関係性があるといわれます。

先述の通り、子宮内膜症と不妊の関係性が強いこともその一つです。

その中でも、注目されるのは、子宮内膜症患者に頻繁に認められる

「子宮内膜症性卵巣嚢胞」という症状およびその手術が、卵巣機能の低下につながる懸念があるという点、

そして、子宮内膜症の再発率の高さです。一例では再発率は30%近いという報告もあるほどです。

子宮内膜症性卵巣嚢胞が与える卵巣機能への影響


子宮内膜症性卵巣嚢胞周囲の卵巣組織と通常の卵巣組織を比較すると、

前者の卵巣皮質の卵胞密度は低いということが報告されています。

また子宮内膜症性卵巣嚢胞の内容液は高濃度の活性酸素を有しており、

この活性酸素が卵胞発育に対して、マイナスの影響を与えているともいわれています。

実際に論文として報告されているものでは、片側の子宮内膜症性卵巣嚢胞の患者において、

左右の卵巣を比較して、その能力差はないかを調べたものがあります。

参照:Benaglia,L.et al:Hum.Reprod.,24:2183-2186.2009

 

要約をすると、

通常の卵巣が50%で排卵するのに対して、子宮内膜症性卵巣嚢胞がある場合には、

31%と大きく低下していることが確認された

というものです。

 

子宮内膜症性卵巣嚢胞に対する手術が与える卵巣機能への影響


子宮内膜症性卵巣嚢胞では、腹腔鏡下にて嚢胞摘出を行うわけですが、

他の良性腫瘍と比べた際に、その摘出された卵巣組織に正常の卵巣組織が付着している確率を比較した論文があります。

参照:Alborzi,S.et al:Ferti Steril.,92 2004-2007,2009.

これによれば、

子宮内膜症性卵巣嚢胞の摘出の際には65%、他の良性の卵巣腫瘍の際には32%と、

2倍近く正常な卵巣組織を一緒に摘出してしまう可能性が指摘されているのです。

 

男子の精子と違い、女性の卵子は新たに作られるものではないため、正常な卵巣組織を摘出してしまうこと、

つまりそこにある卵子のもととなる卵胞も失われてしまう事になり、これは妊孕性に大きな影響があるといえます。

 

そして、繰り返しになりますが、再発率が高いという点もまた懸念となります。

つまり摘出術を仮に何度も繰り返してしまえば、何度も正常な卵巣組織を取ってしまうことになりかねません。

 

ここにある内容だけでなく、様々な観点からも子宮内膜症と妊孕性の関連性は指摘されています。

非常に多くの方が子宮内膜症である可能性を持つため、早めの診察や相談が欠かせません。

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