女性の生理は、視床下部→下垂体→卵巣系の内分泌機能を中心に複雑に制御されています。
それらの内分泌機能は、他と独立しているということではなく、ほかの内分泌機構とも密接にかかわっているので、
他の内分泌機構の影響を受けて、排卵障害などの不妊症になるケースも少なくありません。
特に内分泌疾患がよく発生する年齢が、女性の生殖年齢と一致するため、
続発性無月経や排卵障害などの場合には、ほかの内分泌疾患の可能性も考えられます。
その中でも多くみられる高プロラクチン血症について解説します。
高プロラクチン血症とは
プロラクチンは下垂体から分泌される刺激ホルモンの一種で、
主に乳腺を刺激して、乳汁を分泌させるように働きかけます。
授乳期に排卵を抑制し、子供ができにくくなるのも、このプロラクチンの働きによるものです。
しかし、授乳期ではなかったり、妊娠していない状況でプロラクチンの値が高くなってしまうことは、
それが高プロラクチンという状態です。
そして、高プロラクチンが災いして、乳汁分泌であったり、無排卵月経などの排卵障害を起こしてしまう状態を
高プロラクチン血症といいます。
通常では、血中のプロラクチンの値は15ng/ml以下となりますが、
これよりも高い場合に、高プロラクチン血症が疑われます。
ただし、プロラクチンの血中濃度は朝低く、夜高いという日中変動があり、
月経周期では排卵期と黄体期中期には高くなります。
その他、睡眠や食事など様々な影響を受けます。
そのため、計測するのは、卵胞期初期の午前中で食後2時間以降の安静時に行うのが望ましいとされています。
高プロラクチン血症による症状
月経不順
年に数回しか生理が来ないという稀初月経(きはつげっけい)や生理はあるが排卵しないという無排卵月経。
またそもそも生理が来ないという無月経などの症状が出ます。
こうした場合は基礎体温を確認すると、高温期が来ませんから、平坦なグラフが確認されます。
乳汁分泌
出産した経験がないのに乳汁分泌がある場合は注意が必要です。
(出産した経験がある方だと、出てしまうことはあります)
また原因によって、頭痛や視野狭窄などの症状が出る場合もあります。
高プロラクチン血症の原因
高プロラクチン血症の原因をいくつかありますが、代表的なものを紹介していきます。
プロラクチン産生下垂体腫瘍(プロラクチノーマ)
高プロラクチン血症の多くはこのプロラクチノーマが関与しているケースといわれます。
このプロラクチノーマは腫瘍自体から、プロラクチンが産生されます。
それによって、プロラクチンの産生が過剰となり、高プロラクチン血症となります。
視床下部の機能障害
プロラクチンの場合は下垂体からは分泌が過剰に行われる仕組みになっており、
視床下部からこれを抑えるホルモン(ドーパミン)が産生されてプロラクチンの産生がコントロールされています。
分かりやすく言えば、下垂体がアクセルの役割を果たし、過剰にならないように視床下部がブレーキをかける役割を持っています。
このブレーキ側に何らかの不具合が起こってしまうことで、高プロラクチン血症になってしまうのです。
薬剤による影響
以下のような薬剤による影響を受けることがあります。
降圧剤:α-メチルドーバ、レセルビン
抗潰瘍薬:H2受容体拮抗薬
制吐剤:スルピリド、メトクロプラミド
抗うつ剤:イミブラミン
精神安定剤:フェノチアジン系、ブチロフェノン系
胃腸薬、抗潰瘍剤、抗うつ剤、抗精神薬が多く挙げられています。
高プロラクチン血症の治療
基本的には、原因を除去することを目的とした治療が選択されることが多いです。
プロラクチノーマの場合、腫瘍の大きさが10mm以下の未満の場合は、
薬物療法が選択されます、
10mm以上の場合でも多くは薬物療法が選択されますが、脳神経症状が出ていたり、
トルコ鞍上部への腫瘍の進展がみられる場合などはその限りではありません。
主治医への相談が必要です。
視床下部の機能障害に対する対応は、ブレーキがうまく働いていない状況を治すということですから、
ドーパミン作動薬が中心となります。
薬剤による高プロラクチン血症については、一概には表現できません。
もともとのご病気と不妊治療をどういう位置づけで続けていくのかを患者さまや主治医の方と
協力して進めるべきでしょう。