喫煙に並んで、生活習慣に関することで出てくるのが、飲酒です。
少量の飲酒は、ストレス解消も含めて、健康を害するものでないと考えられることが多いですが、
やはり一定量を超えると、様々な影響が出てきます。
今回は男性不妊との関係を解説していきたいと思います。
アルコールが性機能を抑制するメカニズム
アルコールを摂取することで、血液中のアルコール濃度が高まります。
これは先にも触れたように、少量であれば脱抑制つまりリラックスの効果があるわけですが、
一定量を超えると、逆に脳の機能を阻害・沈静するように働きます。
少し詳細に説明すると、アルコールを取ることで、γーアミノ酪酸(一般的にGABAと呼ばれます)という抑制系の神経伝達物質の濃度が高まっていきます。
その結果、脳から伝達される情報の流れまでもが抑制されてしまいます。
この一定のメカニズムによって、勃起不全、性的反応の低下、その他の性機能不全へとつながっていくとされています。
急激にアルコールを多量摂取した場合
急性的にアルコールを多量摂取した場合に起こる作用として、
・勃起能障害
・射精能阻害
・性的興奮の減少
が挙げられます。
これは実際に、性的な刺激を映画などを通じて与え、その結果腫脹する陰茎の測定値から検討したもので、
アルコール摂取量が増えれば増える程、勃起回数は少なくなったという報告があります。
実際に、男性でタイミングなどで大切な日は心理的なストレスもかかるので、それを回避しようと深酒してしまい、
うまく性交渉できなかったために二重のストレスになってしまったというようなお話も少なくないようですね。
そして、さらに問題になってくるのは慢性的なアルコール摂取が多量である倍です。
慢性的な飲酒が与える男性不妊への影響
男性のアルコール中毒者の研究では、アルコールの量、頻度、期間の増加が
勃起不全とほかの性機能不全に関連があると報告しています。
実際には、アルコール中毒者(白人)34人の方を対象に調べたものでは、
アルコールを飲まない男性と比較して、3倍以上の勃起不全であること、
具体的には勃起時間がアルコールを飲まない男性の4分の1程度しかないということ
がわかっています。
また別の調査では、44人のアルコール中毒者の調査において、
59%の患者が勃起不全を訴え
48%の患者が射精困難
合計84%の患者が何らかの性機能不全を訴えている
ことがわかっています。
様々な影響がありますが、一般的に言われるものは、アルコールの体内における代謝過程で出現するアセトアルデヒドという物質が、
精巣を萎縮させることと関係していると言われています。
精巣の萎縮によって男性ホルモンの供給量が大幅に減少します。それによって、EDなどの影響が生まれるというわけです。
もちろん、これはEDにとどまらず、 全身へと影響するとされています。
男性ホルモン(主にテストステロン)については、回復が可能で、9か月の断酒を行ったところ回復したという論文も出ていますが、
一部の論文では、性機能不全については回復していないという見方のものもありますが、
性機能には生理的なものだけでなく、心理的なものも多く関わっているため、結論付けられてはいません。
いずれにしても、過度な飲酒は性機能にとっても健康にとっても、悪影響の源となります。
厚生労働省の定義によれば適量は純アルコール20グラムですから
ビール(アルコール度数5度) 中ビン1本(500ml)
ワイン(アルコール度数14度) グラス1杯(約180ml)
日本酒(アルコール度数15度) 1合(180ml)
という程度に抑えておくことをお勧めします。