ここまで喫煙については、男性不妊との関係、女性不妊との関係について解説してきました。
今回は、受動喫煙があたえる不妊に関する影響について解説したいと思います。
受動喫煙・副流煙が与える不妊への影響
カナダのマクマスター大学の研究チームが行った調査結果は目を見張るものでした。
A.Kinney,J.Kline,A.Kelly et al.,Smoking,alcohol and caffeine in relation to ovarian age during the reproductive years, Human Reproduction 2007
夫がタバコを吸う女性は、本人が吸わなくても、自分自身が吸っているのと同程度に体外受精の妊娠率が低い
ことがわかりました。
すこし詳しく見ていくと、受精する確率と受精卵の質については大きな差はないのですが、
妊娠率においては
非喫煙:48%
喫煙女性:19%
夫が喫煙:20%
喫煙女性も夫が喫煙している女性も同じように半分以下まで低下していることがわかります。
つまり受精卵が育っていかない確率が高い、あるいは、着床する可能性が高いと言えます。
子宮内膜に移植した受精卵の心拍が確認できる割合についても、
非喫煙:25%
喫煙女性:12%
夫が喫煙:12%
これも自身で喫煙しているのと同じように半分以下まで低下していることがわかります。
例えば、自身の精液所見が正常であるからと言って、その男性が喫煙しているところに女性がいたら
一生懸命している治療の効果をみすみすさげるようなものになってしまいます。
最近では違う報告も様々になされてきています。
まだまだ出てくる受動喫煙の与える不妊・健康への影響
米ロズウェルパークがん研究所のHyland氏が発表した研究論文です。
これは喫煙・受動喫煙が与える、生殖能力と閉経についての関係性を調べたもので、
生殖能力については、約90,000人のデータから、閉経については80,000人のデータを対象に調査しています。
その結果、喫煙・受動喫煙と不妊・早発閉経の関係性が明らかになってきました。
内容を要約すると、喫煙経験のない女性と比べて
-
喫煙者は不妊の確率が14%高く、早期閉経の確率は26%高い
-
高レベルの受動喫煙に曝露している人(喫煙者と10年以上同居しているなど)は、不妊の確率が18%高い
-
喫煙経験者は、閉経が約22カ月早く、高レベルの受動喫煙に曝露していた女性は、13カ月早い
という事なのです。
さらに、早期閉経は死亡リスクにも関連するさえ示唆されています。
Hyland A, et al. Tob Control. 2015 Dec 14
いかがでしょうか。
受動喫煙は喫煙と同等に不妊症への悪影響があることは疑い難く、
またそもそもの健康に対しても同じように悪影響を与えます。
ましてや、自分の喫煙がパートナーの不妊症であったり、健康に影響を与えてしまうことは
自分の体のこと以上に深刻なことだと考えられます。
妊活や不妊治療を始められる方は、ぜひ一度見ていただきたい内容です。