妊孕性温存について考える

HBOCコンソーシアム学術集会に参加して 前編

先日、1月20日、21日には第6回日本HBOCコンソーシアム学術集会と市民公開講座が開催されました。

市民公開講座においては、実際にがんサバイバーの方などが参加され、非常に多くの気づきを得られる会になりました。

妊孕性温存に関わる私たちにとっても非常に重要な内容が含まれているので、一部をレポートしたいと思います。

 

HBOCについてのおさらい


HBOCというのは、遺伝性乳がん卵巣がん症候群のことで、

当院においでになられる患者さまの一部には乳がんの患者さまも少なくありません。

HBOCについては以前紹介しているので、以下から確認いただけます。

遺伝性乳がん・卵巣がん症候群(HBOC)とは

 

遺伝性乳がん卵巣がん症候群に関わっているのが、BRCA1、BRCA2という遺伝子です。

こちらについても、以前の解説があります。

遺伝性乳がん・卵巣がん症候群 BRCA1 BRCA2による影響について

 

HBOCについて考える前に基礎的ながんのことや遺伝性乳がんのことを少しだけ整理します。

 

そもそも「がん」とは

一般にがんと総称されるのは、

血液腫瘍(造血器でできるもの:白血病など)

癌(上皮細胞でできるもの:乳がんなど)

肉腫(非上皮細胞でできるもの:骨肉腫)

のことを指しています。

 

現在、ヒトが一生でがんにかかる確率は、

男性では62%、女性では46%と言われています。

人生100年時代にあってはさけては通れない病と考えられるようになっています。

 

2人に1人が一生のうちにがんにかかる

実際に日本で1年間で新たにがんと診断される方は70万人

乳がんは1年間で6万人

 

また、がんの発生要因には一般的に環境要因と遺伝要因があると言われています。

環境要因とは、食生活や喫煙、飲酒などに起因するもので、

遺伝要因とは、文字通り親からの遺伝やうまれつき、と言われるものです。

 

この後者の遺伝要因について考えるというのが今回の会の1つの趣旨であったかと思います。

 

遺伝性乳がん患者の実際

がん患者さんの中には、家系の中に乳がんや卵巣がんを発症されたが複数いることがあります。

これが一般的に、乳がん卵巣がんの家族歴というもので、これは非常に重要です。

実際に年間で7万人超の乳がん患者さんがいるうちの

8,000人から16,000人は家族性乳がんと考えられており、

そのうち2400人から4000人が遺伝性乳がん卵巣がん症候群と考えられます。

確率的には3-5%という確率です。

 

遺伝性乳がん卵巣がん症候群の特徴

 

遺伝性乳がん卵巣がん症候群と診断される方に見られる特徴は、

・40歳未満の若年で乳がんを発症する

・両方の乳房に乳がんを発症する

・片方の乳房に複数回乳がんを発症する

・乳がんと卵巣がんの両方を発症する

・男性で乳がんを発症する

・すい臓や前立腺にがんを発症する

・家族の中に乳がんや卵巣がんの方がいる

 

と言われています。

ここで非常に重要なのは、病歴や家族歴についてです。

 

妊孕性温存の技術は非常に発達しましたが、

これからは妊孕性温存をしたその先までを考えなければならないからです。

 

妊孕性温存ということになれば、温存するがん患者さんご本人だけでなく、

パートナー、ご家族そして何より産まれてくる赤ちゃんのことも含めて考えていくことになります。

目の前のがんに関する情報だけでなく、家族歴やがんの具体的な病状などを生殖医療施設でも正しくヒアリングしないといけません。

 

実際に遺伝性乳がん卵巣がん症候群となった場合、お子さんに引き継がれていく可能性は50%となります。

そして、遺伝性乳がん卵巣がん症候群であるということは、親からの遺伝ということになりますから、

この時点でがん患者さんご本人だけの問題ではなくなります。

そうした方々を包括的にフォローできるような体制が欠かせないと強く感じました。

 

医療の技術面だけでなく、患者目線で考えると急ぎながらもゆったりとしたプロセスが必要になるため、

ドクターだけでなく、看護師や薬剤師、遺伝カウンセラーやがん・生殖医療専門心理士などのヘルスケアプロバイダーによるかかわりが

益々重要になってくるものと思います。

 

実際のサバイバーの方のお話については、後編で紹介いたします。

 

 

 

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